北朝鮮、米の斬首作戦に過剰反応か
Japan In-depth / 2017年2月22日 15時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー#08(2017年2月20-26日)」
金正男が暗殺されて、もう一週間経った。日本のメディアは連日これでもか、これでもかと未確認情報を垂れ流した。かく言う筆者も質問を受ければ、何か答えざるを得ない。あくまで仮説であって証明されたものではないと断っても、その部分は結局カットされてしまう。この種のコメントは意外に難しいのだ。
特に難しいのは、「なぜ今なのか」という問いだ。張成沢(チャン・ソンテク)に連なっていたからこそ、金正男は中国にとって価値があった。されば、張が粛清されたことにより、金正男の価値は大幅に低下したはず。もう中国は金正男の護衛を止めていたのか。では何故今頃、中国は北朝鮮の石炭購入を止めたのか。疑問は多い。
筆者が最も気になるのは、トランプ政権が北朝鮮に如何なるメッセージを発したかだ。考えてみれば、新政権は選挙中から、世界中の国々、特に問題のある国々に対し、まずは挑発し、喧嘩を売って、圧力を掛けてから、交渉に持ち込み、妥協を探るような戦術的手法を模索してきたようにも見える。
中国も、日本も、NATOもそうだった。北朝鮮に対しても、昨年後半のオバマ政権時代から、やれ斬首作戦だ、外科的手術だなどという噂が流れていたが、トランプ政権はもっと過激なのだろうか。そういえば、米国が金正男を利用して北朝鮮転覆を考えているという噂すらあった。北朝鮮は過剰反応したのか。
〇欧州・ロシア
今週欧州は忙しい。20日に英上院はEU離脱法案を審議し、ユーロ圏諸国はギリシャ問題を討議し、米副大統領はブラッセルを訪問する。22日にはドイツ首相がIMF関係者と会談し、23日にはジュネーブでシリア問題の会合が再開される。特に、米副大統領のNATOに関する発言は要注意だろう。
〇東アジア・大洋州
今週はマレーシア発報道がアジアを駆け巡った。それにしても、北朝鮮の工作員がクアラルンプールにあれほど多数いたのかと思うと、日本だって他人事ではないということか。これまで北朝鮮と親しかったマレーシアが今回は筋を通そうとしている。自国内で工作員が暗殺したのだから当然なのだが・・・。
〇中東・アフリカ
今週の中東は静かだ。トランプ氏がイスラエル首相との会談でパレスチナ問題をユダヤ人国家とパレスチナ人国家の樹立により解決することを目指す「二国」解決策に拘らないと発言したのに、である。一方、国連安保理では米国の大使が米国の伝統的政策は「二国」解決策だと公言している。大丈夫なのか。
23日にはイランとサウジアラビアが会合を持つ。と言っても、内容はハッジ(聖地巡礼)の話だ。たかが巡礼、されど巡礼である。最近はイランからの巡礼者に対する差別などの問題もあると聞くが、このような機会に両国間の意思疎通が続くことを祈るばかりだ。
〇南北アメリカ
今週もトランプ政権は相変わらずだが、23日には国務長官と国土安全保障長官が揃ってメキシコを訪問するという。メキシコ国境の壁の問題は進展するかもしれない。この両長官なら、ある程度話が分かるだろうからだ。しかし、壁の問題はトランプ氏が一度喋り始めたら、ぶち壊しになりかねない、要注意だ。
〇インド亜大陸
22日にインドの外相が中国を訪問し、第一回目の中印「戦略対話」会合を開くという。何を話すのか、興味津々だが・・・。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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