どうなる?マレーシアと北朝鮮
Japan In-depth / 2017年3月7日 9時53分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#10(2017年3月6-12日)
北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射。一方、マレーシアは在クアラルンプール北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(PNG)」として国外追放した。おかげで本日は夜までメディアからの取材に忙殺された。幸い筆者はPNGとなった経験がない。久し振りに外交・領事関係に関するウィーン条約を読み直した。
マスコミの質問は様々だ。次は国交断絶なのか、北朝鮮大使が出国しなかったらどうなるのか、大使がいなくなったら大使館はどうなるのか、敷地内に隠れている二等書記官は逮捕できるのか、航空会社職員の逮捕はどうか、大使が国外退去期限ぎりぎりまで大使館にいたのはなぜか・・・。
国交といっても、外交関係を維持しながら臨時代理大使を置くことから、領事関係への格下げなど、様々な段階、態様があり得る。初めから「大使国外退去」か「国交断絶」か、の二者択一ではない。人と人との関係と同様、国と国の関係も様々な段階があるのだ。まあ、こんなこと知らなくても良いことだが。
更に、外交特権が派遣国と接受国との合意の産物であることも意外に知られていない。だから、接受国はPNGをいつでも一方的に、理由を明示せずに発動できる。PNG通告を受けた場合、ウィーン条約上、派遣国は「本国へ召還又は外交官任務終了」を行う義務がある。今回北朝鮮もこれに従ったのだろう。
派遣国がこの義務履行を拒否した場合、または「相当な期間内」にこれを行わなかった場合、接受国は対象者がもう「外交特権」を持たないと看做すことができる。その場合、違法行為などがあれば、一般の外国人と同様、接受国当局はその「元外交官」の身柄拘束などが可能となるはずだ。
ちなみに、PNGは「名誉」にも、「恥」にもなり得る。例えば、日本人の外交官が近隣の独裁主義国家でPNGとなった場合、マスコミは「恥ずかしいこと」と書くかもしれないが、筆者はそれを「勲章」と考える。その人物は相手が嫌がるほどの情報収集活動を行った立派な外交官だからだ。さて、今回の北朝鮮外交官の場合はどうだろう。他人事ながら、実に心配だ。
〇欧州・ロシア
EU関係では今週は国際会議が目白押しだ。6日は外交理事会、7日は一般理事会、9日には欧州中銀理事会がそれぞれ開かれるのだが、筆者が関心を持ったのは9日の英連邦貿易相会合だ。イギリスはEU離脱後に英連邦加盟国との経済関係強化を図るのだろう。当たり前だが、英国のEU離脱は本気である。
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