迫りくる第三次世界大戦の危機
Japan In-depth / 2017年3月12日 23時50分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米研究者が第三次大戦の可能性示唆
・原因は中露の軍事力拡大と米の弱体化
・危機回避の為に米軍事力復活が必要
■ブルッキングス研究所が鳴らす警鐘
「いまの世界は第二次大戦の終結以来、最大の危機を迎えた」―
アメリカの首都ワシントンでこんな重大な警告が注視を集め始めた。1945年の第二次世界大戦の終わり以来、保たれてきたアメリカ主導の自由民主主義の国際体制がいまや崩壊の危機に直面するようになった、というのだ。
現在の世界の危機を切迫感をこめて主張するのは、ブルッキングス研究所の上級研究員ロバート・ケーガン氏である。同氏は今年2月上旬発売のアメリカの大手外交雑誌「フォーリン・ポリシー」の最新号に「第三次世界大戦へと逆行する」と題する長文の論文を公表した。
ケーガン氏はアメリカ学界でも有数の国際戦略研究の権威とされ、歴代政権の国務省や国家情報会議などに政策担当の高官として登用されてきた。同氏は従来は保守派の論客とされてきたが、近年ではオバマ政権からも政府の諮問機関に招かれ、国際戦略情勢に関する政策提言などをしてきた。昨年の大統領選ではヒラリー・クリントン候補の外交政策顧問まで務めたことがある。
ケーガン論文は、第二次大戦終結以降の70年余、アメリカ主導で構築し運営してきた自由主義の世界秩序がいまや中国とロシアという反自由主義の軍事力重視の二大国家の挑戦で崩壊への最大の危機を迎えた、と指摘していた。その原因はソ連共産党の1991年の崩壊以後の歴代アメリカ大統領が「唯一の超大国」の座に安住し、とくにオバマ政権が「全世界からの撤退」に等しい軍事忌避の影響力縮小を続けたことだという。
■中国・ロシアの軍事的挑戦
ケーガン氏の論文は全体として以下のような骨子だった。
「世界は第二次世界大戦の終結から現在まで基本的には『自由主義的世界秩序』に依存してきた。この秩序は民主主義、自由、人権、法の統治、自由経済などを基盤とし、アメリカの主導で構築され、運営されてきた」
「しかしこの世界秩序はソ連崩壊から25年の現在になって、中国とロシアという二大強国の軍事力をも動員する挑戦により、崩壊の危機を迎えるにいたった。この両国は民主主義や自由の概念を受け入れないまま、いまの世界秩序の変革を求めている」
「中国は南シナ海、東シナ海へと膨張し、東アジア全体に覇権を確立して、同地域の他の諸国を隷属化しょうという野心がある。ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かおうとする。その両国ともその目的のために軍事力を使うことを選択肢に入れている」
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