「圧倒的に勝つ」アイスホッケー女子日本代表発進その3
Japan In-depth / 2017年3月17日 7時0分
神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)
■ベテランの味
2014年、遠くロシアで開催されたソチ五輪。
日本代表を退いていた小野粧子にとって、自宅テレビに映し出される画面は、始めは眩しくて直視出来ないほどだった。かつてのチームメイトの久保英恵や近藤陽子が、イキイキとプレーしていた。共に闘った仲間があそこにいて、自分は今、こうして一人の観客になってしまっている。時間の経過とともに、食い入るようにテレビに貼りついた。ソルトレークも、トリノも、バンクーバーも血の滲む思いで挑戦したのに、行けなかった五輪。
「自分も、もう一度挑戦したい。何としてもオリンピックに行きたい」
強く思うようになっていった。
夫で、コーチでもある豊と二人三脚の特訓が始まった。
戻りたくても、結果を出さなければ戻れないポジション。それまでは、豊がコーチを務める北海道清水町のクラブチーム・フルタイムシステム御影グレッズでのチーム練習のみだった。自分も練習するが、若手の指導にも当たる。それだけでは、代表復活を目指すにはとても練習量が足りない。ウエイトトレーニングを増やして筋力を上げる。夫と共にマンツーマンのシュート練習も毎朝、来る日も来る日も重ねた。
とにかく、まずは国内の公式戦で、得点に多く絡むように、シュート力を上げ、アシストにつなげるパスの精度を上げる。実績を積み重ねなければ、代表候補としてさ、招集はされない。一方で、年齢なりに疲労もたまるので、少しでも早く身体を回復させるために酸素カプセルも取り入れた。
努力が実り、2008年バンクーバー五輪予選後の代表引退以来、7季ぶりに2015年に代表復帰を果たした。2016年春の世界選手権トップディビジョンが久々の国際試合だった。が、全敗。入れ替え戦もチェコに敗退し、ディビジョン1への降格が決まっている。その後、スマイルジャパンの監督は山中にバトンタッチされ、立て直しが図られた。来月、再びトップディビジョン復活も目指す。
アイスホッケーの女子代表を取り巻く環境は、大きく変わった。小野は身をもってその長い過程を体験している、数少ないプレーヤーの一人。
遠征費にも困り、定職にも付けないでプレーを続けなければならなかったソチ五輪代表決定以前の、女子代表。さらに遡るほど、状況は劣悪だった。
当時に比べれば、スマイルジャパンの愛称で多くの人間に親しまれたり、毎月、代表候補合宿が実施されるなど、夢のような現状。
地獄と天国を見た小野に、チーム内での自身の役割を、聞いてみた。
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