「行政見える化」で自治体大わらわ
Japan In-depth / 2017年3月20日 7時0分
ひうち優子(世田谷区議会議員)
【まとめ】
・「新公会計制度」来年度から自治体に導入。
・「行政の見える化」が可能になる。
・会計知識もった職員育成が必要。
新公会計制度が平成30年度から導入される。
一言でいえば、行政の見える化が可能となり、これは行政にとって、画期的なことである。具体的には、全国の地方自治体は、総務省の要請により、「単式簿記」による現金主義会計に加えて、企業会計に近い「複式簿記・発生主義」による財務諸表を作成し、提出することが求められている。
今更、と思うが、行政の会計制度は、本当に遅れている。今までは、現金出納帳ベースのキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトを基本にしたフローの把握しかしてこなかったのだ。新公会計制度導入により、建物等の「資産」や借入金・公債等の「負債」、そして正味財産である「純資産」も把握できるようになり、「減価償却費」などの現金支出を伴わないコストを正確に把握することが可能となる。
この新公会計制度により、ようやく行政も企業並みの会計に、近づいたと言える。
世田谷区でも、平成30年度から制度を導入することとして検討を進めている。世田谷区では、総務省が定めた「統一基準方式」ではなく、「東京都方式」を採用している。「統一基準方式」と「東京都方式」の違いは、税収を「純資産の増加」とみているか、「収益」とみているか、の違いである。
「東京都方式」は税収を「純資産の増加」ではなく、企業会計の「損益計算書」に相当する「行政コスト計算書」に計上し、仕訳は毎日計上するなど、より企業会計に近く、明晰性の高い優れたものになっている。よって、今後、他の地方自治体も、より企業会計に近い、東京都方式の採用をすべきと考える。
現在、新公会計制度導入に向けた検討や準備を進められているが、導入にあたり3つの視点が重要と、私は考える。
①複式簿記導入のスタートにあたって、まずは平成30年度末時点での「貸借対照表」を作成する必要があるが、開始時の貸借対照表は、最新データとする必要があり、実務上は財産目録の整備をはじめ、かなり労力が必要となる作業である。
例えば、建物の経過年数や減価償却の方法、減価償却累計額、退職給付債務など、かなり複雑な計算があり、かつ、台帳の整備・資料の調査収集等に時間の掛かる作業があるので、今から計画立てて準備することが必要である。
②行政活動の透明性の確保、及び、区民に対する説明責任の観点から、外郭団体の見える化も必要だ。
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