「圧倒的に勝つ」アイスホッケー女子日本代表その4
Japan In-depth / 2017年3月25日 7時0分
神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)
■多すぎるペナルティ
続くフランス戦には、4-1で勝利。「立ち上がり、良い入りが出来た」と、監督の山中武司。だが、スマイルジャパンの悪いところが出てしまった。反則が重なって、7つ。対するフランスは5反則。アイスホッケーでは、反則を犯すとマイナーペナルティで2分間、その反則者が退場させられ、自軍は1人以上少ない布陣で戦わなけらばならない。常時、ゴーリーを除けば、5人のプレーヤーで戦うので、反則すると5人-4人、反則者が同時に出れば5人-3人で戦わなければならず、防戦一方になってしまう。自軍の攻めの流れも、悪くなる。
基本的には、強い相手に追いすがろうとして、反則は犯しがちだが、格下相手にこの数は残念な結果だ。
フランスに打たれたシュートは22本、圧倒的に勝つための、打たれるシュートは15本以内、完封勝利も出来なかった。
■育つ若武者
だが、「若手の動きが良い」と、山中。
第2セット目(注:アイスホッケーは随時メンバーチェンジ出来る。通常、1チームは3~4組のセットを40~60秒のインターバルでどんどん交代させていく。一般的に1セット目が最強だが、作戦で色々入れ替えたりする)を、ピリオドのスタートでは、先頭に起用して、起爆剤に活用もした。
最終予選のスマイルジャパンの2セット目のFWは若手の浮田留衣、床秦留可、永野元佳乃で組まれていた。
「昨年から、ずっとこのセットなのでやり易い」(浮田)
「パワーが発揮出来るセットです」(床秦)
「今回は、力が出し切れなかったので、次、頑張ります!」(永野元)
永野元は、カナダの東海岸、オンタリオホッケーアカデミーで武者修行中、招集されている。
大阪・堺の出身の永野元は、チーム最年少の18歳。ソチ五輪を、パブリックビューイングで応援しながら、「次は自分が!」と、強く決意したと話す。
「強くなるために」と、アイスホッケーの聖地・北海道苫小牧市に中2で母と弟と転居。さらなる高みを目指し、駒大苫小牧高校を中退し、単身カナダに渡っている。
そんな後輩らに、いつも励まし役・声かけ役を買って出ているのはスマイルジャパンの元気印の中村亜実。この試合の先制点をあげ、試合のMVPにも輝いた。
試合後、「まさか、私が!?ビックリ!!な感じです」と、満面の亜実スマイル。国際試合、しかも重要な公式戦で、MVP初体験と言う。
だが、次の瞬間には、中堅選手の自覚が顔を覗かせた。
「ムードメーカーである自分の役割も、少しずつ変わって来ているのだと思います。前は皆を笑わせて、和ませるのが自分の仕事でしたが、今は、声をかけて力づけたり、励まさねばと。まあ、ベテランの中の若手って感じですかね、自分」
最後は、しっかりと笑わせてくれた。
若手・中堅・ベテランのバランスが良いのも、スマイルジャパンの強みでもある。そして、ここに至るには―。
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