「殺人許可証を持つ男」は実在? 暗殺の世界史入門その6
Japan In-depth / 2017年4月8日 0時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・ダイアナ元妃事故死にMI6関与疑惑。
・007の産みの親イアン・フレミングは元英国海軍情報部員。
・北朝鮮の要人警護のノウハウは海外でも売れているらしい。
1997年8月、パリにおけるダイアナ元妃の悲劇的な事故死について、英国王室が「暗殺疑惑」の対象となっていたことを、前回紹介した。
実は、直接手を下した「容疑者」も、個人ではなく組織レベルで名指しされていた。SIS(シークレット・インテリジェンス・サービス=秘密情報部)である。一般にMI6(エムアイ・シックス)という名で知られ、テムズ川南岸にある本部ビルは観光ガイドブックにまで載っている。
SISという略称自体、本当はスペシャル・インテリジェンス・サービス=特別情報部であるらしいのだが、その話はさておき、どうしてMI6という名が人口に膾炙するようになったのかを、まず見て行こう。
実は、英連邦内におけるスパイ活動に対抗するMI5という機関があるのだが、これは陸軍情報部(ミリタリー・インテリジェンス)第5課から発展したもので、おかしな言い方ではあるが「由緒正しい略称」である。ただし現在は、内務省の管轄だ。
これに対して、主に海外での諜報活動を行うのがSISで、エージェントは軍の精鋭を集めていると言われるものの、公式には外務省の管轄である。とどのつまりMI5が公式に存在するので、もう一つの情報部はMI6という名だとの誤解が広まったのであろう。
で、なぜこの組織がダイアナ元妃の死に関わっているなどと噂されたのかと言うと、これはどうやら、イアン・フレミングという作家(1908~1964)が創作した架空の諜報員によるところが大きいらしい。その名をジェームズ・ボンドと言うが、彼の認識番号は007である。この、ダブルオー(ふたつ並んだ0)というのは、任務遂行のためならば人の命を奪ってもよいという「殺人許可証」を交付された者だけに与えられる番号だというのである。
これが、あながち荒唐無稽な話だと受け取られなかったのは、作者のフレミング自身が元英国海軍情報部の幹部エージェント(中佐)で、大戦中には、スペインのフランコ政権を監視し、かつ同国内におけるサボタージュなどを扇動して政権基盤を不安定ならしめ、中立を破棄してナチス・ドイツなど枢軸側と同盟しないようにするための工作活動に従事したというキャリアを持っていたためだ。
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