アメリカのシリア空爆は合法か
Japan In-depth / 2017年4月8日 18時0分
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
【まとめ】
・米のシリア空爆が「人道的介入」かどうか議論呼ぶ。
・安保理の支持無し単独軍事攻撃は国際法上違法。
・最終的には国際政治力学で決まる。
■シリア空爆は「人道的介入」か?
シリアのイドリブ地方で4月4日に起きた化学兵器を用いた空爆をアサド政権の仕業と断定して、アメリカは6日、シリア中部ホムスのシュアイラート空軍基地をトマホーク巡航ミサイル59発で空爆した。この空爆を巡っては、国際法上合法か違法かの議論が起きている。
国際法上は、武力の行使は基本的には個別的、集団的自衛権の行使に加え、国連憲章第7条下で集団安全保障体制による強制行動が認められている。アメリカの武力使用は、化学兵器使用によって起きた人道的介入となる。
人道的介入で国際的合法性が認められるのは、2005年の世界サミットの成果文書で支持された国際社会の「保護する責任」であるが、これは、戦争犯罪、人道的犯罪、ジェノサイド、民族浄化の4つに限られる。この保護する責任が具体的に言及され、国際社会が軍事介入したのは、2011年のリビアに対してだった。この時は、国連の安全保障理事会(安保理)による決議で国際社会の人道的介入が認められた。
■化学兵器使用は人道的違反行為
今回のアメリカの空爆は、安保理決議に基づいた介入ではなく、反対勢力はこれを国際法上違法との見方をしている。アサド政権を支えるロシアは、「侵略行為」とまで述べ批判している。他方、日本を含めた西側諸国は概ねこれを政治的に支持している。支持している根拠は何かというと、化学兵器使用が人道的違反行為に当たるという見方である。また、シリアが批准した化学兵器禁止条約に自ら違反したことになる。
シリアは2013年にアメリカの空爆を避けるために、自国の化学兵器の撤廃と化学兵器禁止条約を受け入れている。この条約では、化学兵器の開発から、生産、貯蔵、使用まで包括的な禁止が課されており、さらに、現存の化学兵器は撤廃する義務がある。
シリアの化学兵器は、シリアの申告に基づき、国連と化学兵器禁止機関(OPCW)、アメリカなどの関係各国の協力で撤廃されたが、未申告のものがあるのではないかとの疑惑は残った。その後、クロリンなどの使用が取り沙汰されたが、今回はサリンが使用されたとの疑惑が高まっている。クロリンは水の消毒など民生用にも使用されるため、禁止されてはいないが、サリンはクロリンよりも強力な神経性の毒ガスである。
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