シリア攻撃、米に長期的リスク
Japan In-depth / 2017年4月9日 23時0分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・シリア爆撃、短期的に大成功と評価できる。
・今後地上軍投入も検討せざるを得なくなる。
・むしろ中国・北朝鮮の利益になる可能性も。
■短期的には大成功のシリア爆撃
中国の習近平国家主席(63)が訪米し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(33)の度重なる軍事的挑発の問題などをドナルド・トランプ米大統領(70)と話し合っているその最中の4月6日、トランプ大統領の命令で電光石火の如く実行された米軍の対シリア攻撃は、「弱腰」「世界の警察官をやめた」と見られていた米国への畏怖の念を国内外に再び引き起こした。
政権発足後の3か月間にぶざまで幼稚な失政を重ねてきたトランプ政権にとり、これ以上望めないほどの絶妙なタイミングで、これまでのグダグダぶりを「リセット」する効果があり、短期的には狙い通りの大成功を収めた。
だが、攻撃後2日間で、早くも効果が剥離を始めた兆候が見られる。さらに、今回の攻撃が長期的には米国とトランプ政権をより困難な立場に追い込むことを心配する声が米国内であがっている。
■大成功だったわけ 内政
トランプ大統領は、4月4日にシリア北西部イドリブ県で猛毒サリンを使ったシリア政府軍の空爆に対し、そのサリン散布機が出撃した空軍基地を巡航ミサイルで攻撃することによって、唯一無二の米国の軍事的攻撃能力が健在であることを世界中に印象付けた。
さらにトランプ氏は、「オバマが引いた越えてはならぬ一線」を、4年越しの時を経て執行した。「米国は誓いをやぶらない、遅れても必ず実行する」と力で示し、米国内からは民主党の議会重鎮を含む超党派の支持が巻き起こった。加えて、同盟国の英国、日本、オーストラリアなど多くの国が攻撃支持を表明した。
伏線は、バラク・オバマ前米大統領(55)が在任中の2013年にシリアのバッシャール・アル=アサド大統領(51)に対し、「化学兵器を使用すれば、攻撃する」として明示した、越えてはならない一線だ。だが、アサド政権はこれを無視して毒ガスを使用。これに対し、オバマ前政権は約束通りの攻撃を行わず、米国の権威は国内外で大きく傷ついていたのである。
「強く信頼できる米国」を再び示すことで、トランプ大統領は移民制限・人種対立・司法の保守化・自由貿易・中絶への支援打ち切り・同性愛保護の巻き戻しなどの問題で真っ二つに割れていた国内の民心を、「人道問題」でひとつにまとめ上げた。また、稚拙な政権運営によって日々厳しくなっていた米国民の政権に対する目を、一時的に逸らすことにも成功した。
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