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アメリカのシリア空爆は合法か 続編

Japan In-depth / 2017年4月10日 18時0分

シリアに対しては、この共同メカニズムの調査に協力して情報を提供するよう要請するもので、協力しない場合には、2013年にシリアの化学兵器撤廃要求を含む安保理決議2118号で言及したように、憲章第7章の強制行動の発動を促すものだった。

これに対しては、ロシアが対抗案を提示し、調査団に化学兵器使用の証拠を提出させるといった内容で、強制行動などには言及するものではなかった。両者の相違を埋めるべく、安保理の非常任理事国の10か国が集まり、妥協となる文言を用意したが、結局進展は見られず、3つの決議案は平行線を辿った。その中で、アメリカの一方的空爆が起きたのである。このままでは安保理で何等の進展も期待できないため、実力行使に踏み切ったものと思われる。

■  もたらされた中東における米の政治的回帰

トランプ大統領は、それまでのシリア内戦不介入の立場を転換したが、この軍事介入はトルコやサウジアラビア、イスラエルなど中東諸国の親米勢力の間では歓迎され、また、ロシアに対してもアメリカの力を鼓舞する結果になった。その意味では、アメリカの外交政策にとっては中東における、そして対ロシアの面でもより強い姿勢を示したことになる。

トランプ大統領は、議会への書簡の中で、地域の破局的人道状況がさらに悪くなるのを防ぐ意図もあったと言っていることから、シリアの化学兵器条約違反に加え、人道的介入も視野に入っており、コソボでのNATOによる人道的軍事介入の前例があるので、アメリカの今回の軍事行動は、親米諸国だけでなくアメリカ国内でもより広範な支持を得たものになっている。また、今回の軍事行動が米中会談中に行われたことにより、中国と北朝鮮へのアメリカの強い意思を示したことにも繋がった。

問題はこの次のシリア政策である。一回の空爆でシリア問題が解決する訳ではない。グテーレス国連事務総長も、安保理の結束を促し、政治的解決を求めるよう促している。2015年9月のロシアの軍事的介入以来、シリア情勢はロシア主導の下で動いてきたが、今回の軍事行動でアメリカの政治的回帰がもたらされた。しかし、アメリカはアサド政権下では平和は訪れないとの立場を表明していることから、ロシアとの緊張も暫く続くものと思われる。

 (この記事は「アメリカのシリア空爆は合法か」の続きです。)

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