緊迫「トランプ政権vs中露」
Japan In-depth / 2017年4月13日 21時9分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#15(2017年4月10-16日)
【まとめ】
・トランプにメンツつぶされた習近平主席。
・米露関係も最悪な状態に。
・トランプ氏は「選挙モードと統治モードの間を行き来き」する。
先週は久し振りに中東と東アジアで危機が同時に発生した。6~7日の米中首脳会談2日前にアサド政権が化学兵器を使用。トランプ政権は直ちにこれをレッドライン越えと断じ、フロリダでの米中首脳会談夕食会直後に、トマホークによるシリア空軍基地攻撃が発表された。評論家冥利に尽きるとはこのことだ。
それにしても、中国の国家主席は運が悪いとしか言いようがない。詳しくは今週の産経新聞コラムと来週の週刊新潮コラムをお読み頂きたいが、習主席が世界の指導者としてトランプ氏と堂々と渡り合う、こんな姿を世界に印象付ける絶好のチャンスが対シリア攻撃決断で台無しになったのだから。
中国側は在米大使がトランプ氏の娘婿を通じ、「新型大国関係」、「一帯一路」、台湾を含む中国の「核心的利益」について何とか米国の同意・了解を得ようと必死で根回しを行っていた。正直なところ、筆者も一時は「トランプ政権が中国側の攻勢に屈するかもしれない」と心配したこともあった。
ところが蓋を開けてみたら、今回米側は完全ゼロ回答。それどころか、夕食の際トランプ氏は、「長時間議論を交わしたが今のところ成果は全くなし」と述べた。こんな失礼な話は聞いたことがない。習氏もただ笑っているように見えた。勿論、あの場面が中国のテレビで報じられることは決してないだろうが。
トランプ氏の短気とお説教嫌いは有名であり、独首相が難民問題でトランプ氏と話した後、トランプ氏は報道陣から促されても独首相との握手を拒否し続けたというエピソードがある。似たような話だが、中国の要人は話が長い。「壊れた蓄音機」と同じ。一度スイッチが入れば10~15分は話が止まらない。
こんな長話をトランプ氏が我慢できるとは思えない。「長時間議論し成果ゼロ」とは実に正直なコメントだったのではないか。しかも、その直後にトランプ氏は習氏に対シリア空軍基地攻撃を内々伝え、夕食後にこれを正式に発表した。中国人だったらやはりメンツを潰されたと思うのではないだろうか。
〇欧州・ロシア
10~11日にイタリアでG7外相会議がある。ロシアが参加してG8になった途端、G7/8は機能しなくなり、逆に一時はG20が注目を浴びるようになった。しかし、これだけ中露が悪さをするようになると、G7の重要性が再び認識されるようになったのは実に皮肉である。
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