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北朝鮮問題より深刻「トルコの帝国化」

Japan In-depth / 2017年4月18日 7時0分

北朝鮮問題より深刻「トルコの帝国化」

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#15(2017年4月17-23日)

【まとめ】

・北朝鮮“核実験・ICBM発射”を注視。

・トルコの「帝国化」で中東地域不安定化。

・今後も懸念トランプ氏の“政策判断基準”

 

■北ミサイル発射失敗は「出来レース」?

先週は世界の関心が北朝鮮に集中したのでは、と感じた人も多いだろう。確かに、米国は空母打撃群を朝鮮半島に派遣し、漸く強制力を伴う外交を始めた。中国は米国からの強い要請を受け、これまで以上に北朝鮮への働きかけを行った。北朝鮮は「核実験」でも「ICBM」でもない中距離ミサイル発射を試み、見事に失敗した。

これが出来レースだとは思わないが、結果は「お見事」と言う外ない、というのが筆者の見立てだ。北朝鮮は米中の圧力に屈しない姿勢を示しつつ、ちゃっかり北京に恩を売った。これで中国は米国に「北朝鮮に核実験とICBM発射を断念させた」と言えるだろう。米国だってカールビンソン派遣の目的を一応達成したではないか。

北朝鮮問題のポイントは二つある。第一は、予測不能な金正恩が合理的な戦略判断を続けられるか否かであり、第二は、北朝鮮の核弾頭付きICBM実戦配備が近づいたら、米国は今のように対北朝鮮攻撃を躊躇しなくなるというジレンマがあること、要するに今後北朝鮮の核問題は「時間との戦い」となることだ。

今回4月末までこのまま北朝鮮による核実験やICBM発射がなければ、このラウンドは終了。逆にどちらかでもあれば、中国は面子を失い、米国の対中圧力が倍増するだろう。しかし、それはそれだけの話。筆者にとって先週のハイライトは北朝鮮などではなく、16日に行われたトルコの国民投票の結果だ。

 

■トルコ「帝国化」で中東の安定遠のく

理由は簡単、エルドアン大統領が「プーチン化」し、ケマル・アタテュルク以来一貫して世俗主義共和国を志向してきたトルコが遂に「帝国化」のプロセスを開始したと考えるからだ。このことは、短期的に、シリアをめぐる問題を更に複雑化させ、中長期的には、NATO南方の結束が綻び始め、トルコのEU加盟も絶望的となるだろう。

ユーラシア大陸における現状変更志向のリビジョニスト帝国は四つになった。ロシア、イラン、中国に次いで、遂にトルコもその仲間に加わったということだ。トルコのような大国が欧米との協力路線を放棄し、ロシアやイランと共にリビジョニスト勢力の一角を占めるようなれば、中東地域の安定は増々遠のくのではないか。

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