北朝鮮エサに米翻弄 高笑いの習近平
Japan In-depth / 2017年4月23日 12時0分
田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員)
「田村秀男の“経済が告げる”」
【まとめ】
・中国為替操作国指定見送ったトランプ氏、対中通商で軟化。
・背景に、中国による北朝鮮への圧力の期待。
・米は中国の膨張路線に加担させられる懸念がある。
■対中国為替操作国指定見送ったトランプ
トランプ米大統領は14日、中国に対する為替操作国指定を見送った。大統領選挙期間中は「われわれは中国を再建した。中国がわれわれから奪ったカネでだ」と叫び、輸入中国製品に45%の関税で報復するという公約を反古にした。理由は北朝鮮問題で習近平国家主席が協力すると約束したからで、トランプ氏はツイッターで「北朝鮮問題でわれわれに協力する中国を為替操作国とどうして呼べる?」と16日に釈明している。
習氏のほうは高笑いしているだろう。中国共産党・人民解放軍のトップが朝鮮戦争で共に血を流した盟友を見限り、おいそれと米国の言いなりになるはずはない。圧力をかけるポーズだけで済ませようとするのがオチだ。とりあえずは北からの石炭輸入船の入港を拒否したというが、石油輸出は続けているし、中国の銀行は依然として北向けの外貨送金に協力している。筆者が東京で会った旧知の人民解放軍関係者は、トランプ・習両首脳間のやりとりを引き合いに出しながら、「これで米中関係は今後50年間、大丈夫」とうそぶいていた。
■中国を通貨政策「監視対象」にとどめた米
トランプ氏のほうはフロリダでの7日の米中首脳会談で、すっかり習氏に入れ込んだようだ。トランプ氏は12日の米ウォールストリート・ジャーナル紙との会見で、「習氏とはウマが会う」とすっかり上機嫌だった。数千年間の中国、朝鮮関係の中で朝鮮半島が中国の一部だったこともあると、習氏のレクチャーを聞かされたトランプ氏は「中国は北朝鮮に対し強い影響力があるという強い印象を受けた」と述べている。そして、習氏からの「協力」に賭けたのだろう。
14日に発表した米財務省の主要貿易相手国・地域を対象にした外国為替報告書では、中国を日本、ドイツ、韓国、スイス、台湾と同列の通貨政策の「監視対象」に指定したのにとどめた。「北朝鮮問題で協力しなければ、対中通商強硬策をとる」というトランプ・カードは引っ込められ、対中通商で軟化する姿勢に転じたのだ。
■読まれているトランプ氏
北京のほうはとっくにトランプ氏の出方を計算済みだったようで、中国の崔天凱駐米大使は中国の国営テレビとのインタビューで、首脳会談合意の米中貿易不均衡是正のための「100日計画」は中国側の提案によるとし、「まず簡単な問題から成果を出しつつ、難問解決への努力をしていけばいい」と悠然としている。
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