北朝鮮エサに米翻弄 高笑いの習近平
Japan In-depth / 2017年4月23日 12時0分
何よりも、金正恩が挑発行動を繰り返す限り、トランプ氏は中国を頼りにするしかなさそうだ。金体制は崩壊させるよりも存続したほうが中国の利益になる。
「米国が一歩後ろに引けば、中国は二歩前に出る」とは旧知の共和党主流派の中国専門家から聞いた。その通り、中国はそう仕掛けてくる。
■米のAIIB参加をもくろむ中国
米中首脳会談で北朝鮮問題での協力を求めるトランプ氏に対し、習氏は中国主導の国際金融機関、アジアンフラ投資銀行(AIIB)への米国参加を懇請した。習政権は「一帯一路」を掲げ、アジア全域の陸と海のインラフを北京に直結させ、中華経済圏化しようともくろむ。
インフラは軍事転用可能で、南シナ海への海洋進出と同じく、軍事面での膨張策とも見える。北京で2016年初めに開業したAIIBはその先兵だ。AIIBは日米が参加していないために、信用力がなく、ドル資金調達に汲々としているが、トランプ氏が応じれば、AIIBの国際金融市場での地位を確立できる。
親中派の鳩山由紀夫元首相はAIIBの顧問を引き受けているが、ツイッターで「トランプと習近平の首脳会談でトランプはアジアインフラ投資銀行(AIIB)について前向きな発言をしたとのこと」と前置きしし、「日本はアメリカの後塵(こうじん)を拝してはいけません。今こそ日本はAIIBに入るべきです」と訴えた。
「米国がAIIB参加に前向き」との情報源は不明だが、中国側がかねてからそうした宣伝工作をしかけてきた。鳩山氏はそれにまんまと乗せられたのだろうが、あながち「フェイク(虚偽情報)」と笑い飛ばすわけにいかない面がある。トランプ氏の対中観は歴代の米政権と同様甘いのだ。
■北朝鮮は餌 米から金を奪い続ける中国
冒頭で引用した「われわれは中国を再建した。中国がわれわれから奪ったカネでだ」というトランプ発言は、在来型政策を否定するスティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問や、著書「米中もし戦わば」で知られるピーター・ナバロ国家通商会議委員長に影響されたのだろうが、選挙戦のレトリックで終わった。だが、データを調べるとその見方の正しさは歴然としている。
グラフは「米国のモノの貿易赤字と海外からの米国債など証券購入を合算した資金流出入」である。世界最大の債務国米国は外部からの資金流入に依存する。貿易赤字は大きくても、相手国がその分を対米証券投資で還流させれば、米金融市場は安定する。一目瞭然、日本は対米貿易黒字分を上回る資金を米証券市場につぎ込み、米経済に貢献している。対照的に、中国は米国に貿易黒字を証券投資で還流させていない。中国は昨年年間3500億ドルの黒字に加えて1300億ドルの証券を売却、合計で4800億ドル、米国からドル資金を手に入れた。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、17年2月までの累計で、米国から30兆ドル以上の資金を「奪い」、経済超大国にのし上がってきた。
トランプ氏は北朝鮮問題を餌にする習近平政権によって、まんまとその膨張路線に協力させられそうだ。
▲データ:CEIC、米財務省 グラフ作成:田村秀男
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