トランプ政権「終わりの始まり」
Japan In-depth / 2017年5月17日 7時49分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#20(2017年5月15-21日)
【まとめ】
・録音テープに言及するトランプ氏の不可思議な行動。
・北朝鮮のミサイル開発を過小評価するな。
・FBI長官更迭問題、トランプ氏の終わりの始まり。
■不可思議なトランプ氏のツイート
先週もトランプ氏は我々の期待を裏切らなかった。5月12日21時26分のTwitterで彼はこう呟いた。
“James Comey better hope that there are no "tapes" of our conversations before he starts leaking to the press!”
それにしても、なぜトランプ氏は頼まれもしないのに録音テープの存在を暗示したのだろう。
先日更迭したJ・コーミー元FBI長官の対メディア情報リークを牽制するためだったとしたら、彼は驚くべき「政治音痴」だ。ホワイトハウスでの録音テープといえば、誰だって1972年のウォーターゲート事件を思い出すだろう。1974年の夏にニクソンが辞任した時、偶然にも筆者は米国旅行中だった。
ある米共和党識者が、「あの録音テープがなかったら、ニクソンは辞任しなくても済んだかもしれない」とCNNで述べていた。当時の雰囲気を知る筆者もその通りだと思う。そんな微妙な情報が存在する可能性にトランプ氏はなぜ敢えて言及したのか。トランプ氏の側近は心の休まる暇がないのではないか。
■過小評価するな北朝鮮のミサイル開発
今週のもう一つの注目点は北朝鮮の新型ミサイルらしき飛翔体の発射だ。高度2000キロを超える「ロフテド」軌道というから、二つの意味で興味深い。第一は、「ロフテド」軌道のミサイルは迎撃が難しくなること。第二は、高高度からの大気圏再突入で、北朝鮮がICBM完成にまた一歩近づいた可能性だ。
タイミングも最悪だ。中国では「一帯一路」首脳会議の初日に当たり、韓国では文在寅新大統領が始動したばかり。明らかに北朝鮮は中韓をあざ笑うが如く、核ミサイル開発を進めているようだ。我々は北朝鮮の開発能力を過小評価しているのではないのか。
確かに、北朝鮮のミサイルは資金的にも技術的にも限界がある。だが、中国やイランがA2/AD技術開発の一環としてこの種のミサイル実験を行っている可能性は高い。されば、北朝鮮が「空母キラー」型ミサイル攻撃能力を手に入れるのも時間の問題だろう。いずれにせよ、あまり良いニュースではなさそうだ。
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