米ロシア疑惑 特別検察官は誤訳?
Japan In-depth / 2017年5月21日 9時56分
コックス氏は“special prosecutor”という正式の肩書きだった。直訳は「特別検察官」である。この当時、この「特別検察官」は連邦政府の外、つまり司法省の権限の外にある連邦裁判所によって任命されていた。しかもこのタイプの「特別検察官」は最初からどの場合も刑事訴追の権限を与えられていた。
■「特別顧問」は司法長官管轄下
だがこの「特別検察官」の任命を規定した法律はすでに撤廃されてしまったのだ。そのかわりに現在は連邦規制法により、今回のような独立した権限の捜査官が必要とされた際は裁判所ではなく司法省、つまり司法長官によって「特別顧問」が任命される。
しかもその「特別顧問」は必ずしも刑事訴追の権限は与えられず、捜査の結果の刑事訴追の是非を司法長官に勧告するという形になっている。ただし特別の場合は「特別顧問」にも刑事訴追の権限が司法長官から与えられる。今回のケースはその一例ということなのだ。
だから「特別顧問」はあくまで司法長官の管轄下にあり、同長官によって罷免や解任されることも理論的にはありうることとなる。司法長官の上司である大統領にも特別顧問を解任できる権限はあるわけだ。
以上の実態をみると、今回の「特別顧問」は「特別検察官」と呼ばれても、ウォーターゲート事件当時の「特別検察官」とは内容は異なることが明白である。当時は司法省からも大統領からも独立した裁判所によって任命されていたのが、今回はあくまで司法長官の任命、さらには司法省の管轄下での独立捜査官なのである。だから厳密にいえば、この訳は誤訳ともいえるだろう。
日本の大手新聞はこのへんをどこまで調査したのか。単にトランプ大統領の刑事訴追を望むだけで、「特別顧問」をあえて意図的に特別検察官と訳した、ということではないことを願う次第である。
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