米国vsその他 意見衝突したG7
Japan In-depth / 2017年5月29日 22時59分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#22(2017年5月29日-6月4日)
【まとめ】
・G7、気候変動で米国と他の国との相違は大きかった。
・金正恩のメンタリティが大戦時の日本と同じかどうかにより日米韓の対応異なる。
・トランプ政権の中東外交が成功する確率は低い。
北朝鮮がまたミサイルを発射した。3週連続ともなると、通常とは「何かが違う」はず。素人の筆者にも気になることは多い。今回発射したのがスカッドだとしても、その目的については新型燃料、新型エンジン等のテストからG7への威嚇を兼ねた在庫品整理まで、全ての可能性があり得るだろうからだ。
サミットといえば、今回の結果は多くの意味で異様だった。公式文書でメンバー国間の意見の相違を書くのはかなり異例、少なくとも筆者には記憶がない。相違点は普通書かないのだが、今回の気候変動問題に関する「米国対その他」の相違は「書かないこと」すら許されないほど大きかったのだろう。
今回はトランプ氏のデビュー戦だから仕方ないとしても、問題は来年以降だ。このまま続けば、G7の公式文書が持つクレディビリティは大幅に減殺されるだろう。せっかくG7における日本の影響力・発言権が向上しつつあるだけに残念だが、問題は深い。詳しくは今週の産経新聞「正論」に書くつもりだ。
〇欧州・ロシア
先週のNATO首脳会議にはトランプ氏が初参加した。心配した割にはテロ対策強化に向けた「行動計画」で一致、IS掃討やアフガニスタン治安部隊への支援強化も進めるという。加盟国の国防支出増大問題でも進展があったようだ。それではトランプ氏のこれまでのNATO関連の言動は一体何だったのだろうか。
〇東アジア・大洋州
問題は現在の北朝鮮の指導部のメンタリティを如何に理解すべきかだ。1940年代の日本と同じなのか、それとも全く異なるものなのか。この答次第で日米韓の対応は大きく異なるだろう。彼らはDPRK「国体護持」のためなら「玉砕」も辞さないのか。それとも金王朝への忠誠心は「うわべ」だけのものなのか。
〇中東・アフリカ
トランプ氏のサウジ、イスラエル、バチカン訪問ではっきりしたことが幾つかある。第一はオバマ式イラン重視中東外交が終わったこと。第二は、仮に米中東外交がオバマ以前に戻っても、状況は2011年以前には戻らないこと。最後に、それにもかかわらず、トランプ氏は異常なほど楽観的であることだ。彼の楽観論の理由は分からない。
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