ドゥテルテ氏、共産勢力と共闘?
Japan In-depth / 2017年6月7日 19時34分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・フィリピンミンダナオ島でイスラム過激派掃討、戒厳令続く。
・大統領、他のイスラム武装組織や共産勢力に共闘呼びかけ。
・背景は戦闘早期終結のための“苦肉の策”
■ミンダナオ島の戒厳令続く
フィリピン南部ミンダナオ島で5月23日の戒厳令布告以来続く本格的な戦闘について、ドゥテルテ大統領は27日に訪問先のホロ島にある陸軍基地で「他のイスラム武装組織や共産党武装勢力などが協力するなら、国軍と同等に扱い、ともに対テロリストと戦おう」と述べた。
これは現在ミンダナオ島西部南ラナオ州マラウィ市を5月23日以来占拠、戒厳令下で国軍と戦闘状態になっているイスラム過激組織「アブサヤフ」、「マウテグループ」の掃討に別のイスラム武装組織、さらに共産党勢力までも巻き込んで「挙国一致」の作戦という形を取ることを提案したのだ。提案の実効性がどこまで現実的なものなのかは疑問が残り「またドゥテルテ大統領の単なる思いつきに過ぎないのではないか」との見方も出る中、地元マスコミなどは「それほど中東のテロ組織のフィリピン浸透が深刻化している表れ」との観測も強まっている。
テロ組織「イスラム国(IS)」と連携し、その信奉者が集まっているとされる「アブサヤフ」と「マウテグループ」はフィリピン南部にISの東南アジアの拠点作りを画策しているとされる。マラウィの戦闘で死亡した過激組織の戦闘員にマレーシア人、インドネシア人、シンガポール人が含まれていたことがそれを物語っている。
つまり中東のシリアやイラクなどISが活動する地域への渡航を断念したIS信奉者や東南アジアでのテロ活動を目指す一派がフィリピンに渡って「アブサヤフ」などに合流、戦闘に参加しているというのだ。
■大統領、イスラム組織・共産党組織にも打診
ドゥテルテ大統領は同じミンダナオ島を拠点とし、反政府武装活動を続けるイスラム過激派の「モロ民族解放戦線(MNLF)」とその分派である「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」に加えて、フィリピン共産党軍事組織「新人民軍(NPA)」に対しても政府軍との戦闘の中断と、国軍によるIS勢力一掃作戦への参加を呼びかけた。地元記者も「MNLFやMILFはミンダナオ島が主な活動拠点で同じイスラム過激組織という共通点もあり、国軍に取り込む利点はあるだろう」と分析する。
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