拡散するISの脅威 ASEAN結束
Japan In-depth / 2017年6月22日 8時51分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ISフィリピン南部に東南アジアIS拠点建設の動き。
・フィリピン・インドネシア・マレーシア共同監視行動実施。
・ISとの戦いは東南アジア各国の課題となっている。
フィリピン南部でイスラム武装組織による戦闘が続く中、東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係国が結束して、テロ組織「イスラム国(IS)」の脅威に対応する道を探っている。
というのもフィリピン南部ミンダナオ島の地方都市マラウィで続く戦闘にISの戦闘員さらに東南アジアのISシンパ、別のイスラム過激組織メンバーらが加わっていること、さらにISがフィリピン南部に東南アジアのIS拠点を築こうとしていることなどが明らかになり、もはやフィリピン一国では対応が不十分で、国境を超えた地域として対処すべき問題であるとの認識が共有されたためだ。
インドネシアのリャミザード・リャクドゥ国防相は6月14日、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、シンガポール各国の国防相とカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)北部のマレーシアとの国境に近いタラカンで近く会談する意向を明らかにした。
タラカンは同島北東部に位置し、フィリピン南部へのISシンパなどの密航ルート摘発の最前線でもあることから今回の会議開催場所に選ばれた。
■ISに対し海空で共同巡回、監視
会議ではミンダナオ島で続くフィリピン国軍との戦闘で逃走してくるIS関係者やフィリピンの過激派組織メンバーのマレーシア、インドネシア、ブルネイなどへの密入国を阻止し、さらに新たな人員がフィリピンに密入国するのを防ぐ方法などについても協議される見通しだ。
マラウィでの戦闘ではこれまでにフィリピン国軍によってインドネシア人、マレーシア人のほかにイエメン、サウジアラビア、チェチェン国籍の外国人が殺害されている。こうしたことなどからフィリピンのドゥテルテ大統領も「この戦闘はもはやISとの戦闘であり、ISはすでにフィリピンに存在している」との見方を強調しており、今回の戦闘に米軍が支援していることからも単なる「フィリピン国内の反政府勢力との戦闘」ではなく「国際的なテロとの戦い」の側面が強まっている。
加えてマラウィ市での戦闘が膠着状態に陥る中、市内からは隣接する北ラナオ州イリガン市や東ミサミス州カガヤンデオロ市などにISメンバーらが脱出している可能性をフィリピン国軍が明らかにしたことからミンダナオ島広域そして周辺海域での警戒、監視が喫緊の課題として浮上している。
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