陰謀説の読み方① 「ロシア疑惑」は事実か?
Japan In-depth / 2017年6月30日 0時20分
ベトナム、アメリカ、イギリス、中国、またアメリカと、任地となった外国に住み、その国で起きたことを日本の読者に向けて報道する。そんな活動である。
報道だから当然ながら情報との格闘である。この情報が正しいのか。事実なのか。それともウワサであって事実ではないのか。虚偽の情報なのか。点検が日常必須の作業となる。世間で認知された公的機関や当事者が情報を発信すれば、まあそのまま報道してもよい。
発信したという事実は動かないから、とくにその情報の真実性を確認しなくても、報じてよいだろう。その場合に情報発信の主体となる機関や個人の信頼性がカギとなる。
アメリカのホワイトハウスが新しい政策を公表すれば、その政策内容は正確な情報として報じてよいのは当然だろう。だがホワイトハウスであっても、事実ではないことを事実だとして発表することもありうる。事実ではないことが確認されれば、それ自体が大きなニュースとなる。
特定の団体や個人が自分たちの直接の活動についての情報を伝えてくれば、まあその内容は事実とみてもよいだろう。だが当事者でもなく、公的機関とも関係なく、という人物が述べる情報はそのまま使うわけにはいかない。確認の作業が欠かせなくなる。
一方、その情報が示す出来事にかかわる立場にない人がなにげなくもらす言葉がもしその通りなら大ニュースだという場合もある。そんなときは他の情報源や関係筋を探して問いただし、情報の真偽を確かめることに努める。最初に聞いた情報は事実ではないウワサだと判明することもある。逆に事実であり、重大な出来事だとなることもある。
ここで、ふっと思い出すのは2000年5月の北朝鮮の金正日総書記(当時)の中国初訪問である。私は産経新聞中国総局長として北京に在勤していた。その5月のある日、「金正日がすでに中国を訪問しているらしい」というウワサを聞いた。中国政府に関係のあるような、ないような、いわゆる消息通とされる人物がささやくように語ったのだ。だがどこもそんな情報は発表も報道もしていない。
事実とすれば大ニュースである。中国外交部など関係当局にあたっても、北京の北朝鮮大使館に質問しても、「そんなことは知らない」という返事だった。
産経新聞総局の中国経験豊かな後輩記者がさらに取材しても、なんの確認も得られない。総局の中国人助手たちに北朝鮮に近い中国の北東部の鉄道の駅などに電話をして調べてもらっても、わからない。そのウワサは飛行機嫌いの金正日は列車で中国領内に入ってきたらしい、というのだった。
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