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陰謀説の読み方② 陰謀はいつもそこにあった

Japan In-depth / 2017年7月1日 7時0分

このときも日本側で陰謀説がどっとわき起こった。

「日本企業をアメリカ市場から締め出すための陰謀」

「日本側企業を狙い撃ちしたレーガン政権の陰謀」

「日米貿易摩擦での日本側をワナにかけた政治的な捜査」

こんな字句が実際に日本側の雑誌や新聞の見出しになった。もちろんそのような趣旨の記事が出たからである。

この陰謀説はどんな趣旨かといえば、同事件は単なる刑事摘発ではなく、レーガン政権の諸関連機関が一体となり、日本産業界に目をつけて、うまくワナにはめた政治的攻撃なのだ――という骨子だった。

この捜査にあたったFBI(連邦捜査局)が日本人容疑者に対しておとり捜査を実施したことが日本側のその種の「説」をことさらあおる結果を生んだようだった。

この陰謀説に従えば、アメリカ側では日本との貿易問題で中心となる通商代表部(USTR)がFBIと組んで、事前に周到な準備をしたうえで刑事捜査に踏み切った、というシナリオとなる。

私は当時、前述のカーネギー国際平和財団での研究活動を終えて、また毎日新聞のワシントン駐在特派員にもどっていた。このIBM産業スパイ事件ではすぐに舞台となったカリフォルニア州のサンノゼに飛んで報道にあたった。現地で各方面の取材にあたったが、いくら調べてみても、アメリカ側の「陰謀」を示すような事実はただの一つも出てこないのだ。

私自身の記者としての能力が不足しているからその陰謀の証拠をみつけられないのかもしれないと、謙虚に自省してみて、取材をさらに徹底させてみても、結果は同じだった。

一方、日本にいる「消息通」たちはどういうわけか太平洋のはるか彼方の陰謀を見抜いて、その趣旨を断言するのである。

 

(「③ロッキード事件の謎」に続く。全4回。毎日配信)  

この連載は雑誌『歴史通』2017年1月号に掲載された古森義久氏の論文「歴史陰謀説は永遠に消えない」に新たに加筆した記事です。

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