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陰謀説の読み方③ ロッキード事件の謎

Japan In-depth / 2017年7月3日 9時59分

「ロッキード事件の陰謀説を唱える人たち対して私は事実を直視せよ、といいたい。米国の謀略説であれば事件は深みを増し面白いかもしれない。だが東京地検は米側での暴露より四年も前にロッキード社が日本への航空機の売り込みに暗躍していた事実を知っていた。

タプロイド版四ページの日本報道新聞が一九七二年十一月一日号で一面から三面を使って『ロキードスキャンダル』を報道しているからだ。『未曾有の汚職に発展か 全日空のエアバス問題 ロッキードが勝利する! 一千億円の”空中戦”』、さらに『田中―小佐野―ニクソンーロッキード・丸紅の点と線』とズバリ、ロッキード人脈を暴露したのである。この事実を忘れてはならない」

「米上院多国籍企業小委員会の情報がなくても東京地検は田中角栄元首相の捜査に乗り出していた。あえて言えばその情報は捜査へのきっかけを作ったに過ぎない。話を資源がらみや外交問題に絡ませると話がもっともらしく謀略的になり知的で面白くなる。新聞記者は事実を持って記事を書くべきである。今年のロッキード事件四十周年はまた謀略説がはびこるのであろう」

ちなみに牧内は私の毎日新聞時代の上司だった。傑出した事件記者として知られ、ロッキード事件取材の指揮をとり、新聞協会賞まで受けている。その牧内が90代となったいまも健筆をふるい、「陰謀説」を完全に否定する姿勢にはすざましい迫力を感じさせられる。

しかしこうした日本側でのアメリカ陰謀説の虚構の指摘にもかかわらず、その後も陰謀説症候群は消えてはいない。

■  TPPにまつわる陰謀説

ごく最近でもアメリカ側からのTPP(環太平洋パートナーシップ)参加への圧力があると、日本側の一部識者の間では当初、「TPPはアメリカ側が日本の郵政貯金や医療保険制度から大規模な富を収奪しようとする陰謀だ」という説が叫ばれた。

私はワシントンでTPP問題を取材していて、オバマ政権と同じ民主党の議員たちの間にTPP反対の動きが強いことに驚かされていた。一枚岩になってTPPを武器に日本から巨額の富を奪おうなどという意図がアメリカ側にあるとは、どうしても思えなかった。 

この種の陰謀説が日本側で非公式に民間の学者とか研究者、あるいはジャーナリストの間でささやかれているうちは、まだ問題は少ない。だが現職の国会議員、しかも政権与党の有力メンバーがアメリカ側の陰謀説を堂々と発表するとなると、事態は変わってくる。

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