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陰謀説の読み方④ その弊害にどう立ち向かうか

Japan In-depth / 2017年7月5日 9時0分

第三は「アメリカとその傀儡さえ撃退すれば戦後のベトナムではあらゆる政治勢力が共存する民族の解放や和解が実現する」という北側の政治宣伝を信じた誤認である。現実には戦後のベトナムは共産党の独裁支配となり、それになじまない南ベトナムの一般国民はその後、なんと20年にもわたり数百万が国外へ脱出した。

日本でのこうした誤認に立脚してベトナム戦争をみれば、悪いのはとにかくアメリカなのだという構図が浮かびあがる。そこからは「ベトナム戦争もアメリカの陰謀だった」というような陰謀説さえも生じていたといえよう。

 

■「陰謀説」が広まるわけ

さて、こうした陰謀説を広める側にとっての利点は陰謀の存在を証明しなくてもよいところにある。すべてがもやもやとした霧の中だからこそ陰謀なのだ。陰謀説では主役はCIA(中央情報局)にされる。当のCIA側は自らの活動に関する種々の主張には否定も肯定もしないという政策をとっている。どんなことをいわれても反論はしない。

だからCIAを使って陰謀説のプロパガンダをばらまく側にとって、どんなデタラメを述べても決して当事者からは反撃されないこととなる。いくらウソ八百の主張でも否定はされないのだ。

逆に根も葉もない陰謀説でなんらかの弊害をこうむる側にとっては陰謀説がデマやウソであることを証明するのは、その真実性を証明するよりもずっと難しい。本来、否定しても否定しても否定しきれない部分が残るところが陰謀説の暗闇の効用なのだといえよう。

 

■「陰謀説」の学術的分析

もっとも陰謀説現象は日本だけではない。アメリカの研究者ダニエル・パイプスが1990年代に出版した「陰謀=被害妄想はいかに繁茂し、どこから発生するのか」と題する陰謀説解析の書は多数の国で語られる陰謀説を多角的に分析していた。

同書によると、陰謀説とは実際には存在しない陰謀、あるいは存在する証拠のない陰謀を存在すると断言する主張であり、往々にして架空の陰謀への恐怖を増殖する。陰謀説の歴史は十字軍の時代にさかのぼるほど古いが、19世紀以降、「世界制覇を狙う」式の国際的な陰謀説の標的はユダヤ民族、フリーメーソン、アングロ・サクソンに絞られてきた。

同書によれば、陰謀説の特徴はまず具体性の欠如、矛盾や背反を陰謀の証しとする傾向だという。選別的でペダンティック(学識をてらう)な歴史の引用、異なる陰謀説同士の相互依存などだともいう。

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