ドゥテルテ比大統領就任1年 最大の試練
Japan In-depth / 2017年7月7日 18時0分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ドゥテルテ大統領、就任1年で支持率75%。
・中国、米国相手にしたたかな外交展開、国民の喝采浴びる。
・「テロとの闘い」長期化で政権最大の試練に直面。
■圧倒的な支持率
フィリピンのドゥテルテ大統領が6月30日に大統領就任1年を迎えた。昨年の大統領選挙期間中から圧倒的な支持率で大統領に選出され、その後も高い支持率を維持しており、最近の世論調査でも75%という数字がその実態を示している。
就任直後から強力に推進している麻薬事案対策では正当な司法手続きを超えて現場での麻薬犯罪容疑者の治安要員による射殺、いわゆる「超法規的殺人」が横行、政権もそれを“黙認”する形で、麻薬犯罪は激減したとされる。
この1年間で逮捕収監された麻薬犯容疑者は数千人、麻薬常習者で要治療者として登録されたのは数百万人ともいわれる。そして殺害された麻薬関連事案の容疑者は警察発表で約5000人、実際には約8000人近いとされている。
その中には巻き添え死亡、誤認殺害、無関係の殺人などが含まれている可能性が極めて高く、欧米を中心とした国際社会やキリスト教組織、人権団体などからは「深刻な人権侵害である」との厳しい指摘を受け、国会議員の間からも疑問を示す声が出ている。
さらに議員からドゥテルテ大統領自身の不正蓄財問題を告発する動きもでるなど批判勢力は存在するが、圧倒的に国民の支持を背景にドゥテルテ大統領とその政権は強気の姿勢を崩していない。人権侵害を指摘したデリマ上院議員などは逆に不正や不倫を暴露されて政治生命を絶たれ、司法の場に引きずり出される始末。まさに国内的には怖いものなしの強い大統領として各種政策を強力に推し進めている。
■米中を手玉の領有権問題
ドゥテルテ大統領が麻薬対策と同様に就任直後から直面したのが南シナ海を巡る中国との領有権問題だ。就任当初は領有権問題がある島に自ら上陸してフィリピン国旗を立てるなどと強硬姿勢を見せていたものの、訪中の成果として中国政府からの巨額の経済援助を受けることとなり、強硬姿勢を転換。歴代政権が築いてきた米政府との関係を見直す姿勢をみせて当時のオバマ政権の怒りと不信を増幅させた。
そのオバマ大統領に対し「地獄に落ちろ」などと得意の罵詈雑言、暴言もドゥテルテ大統領の代名詞となり、内外のニュースを連日賑わしたものだった。
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