ラオスで中国人襲撃事件 高まる反中感情
Japan In-depth / 2017年7月23日 18時0分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ラオスで6月中国人襲撃事件発生。
・中国の進出資本による強制労働や公害などが引き金に。
・東南アジア諸国は中国の「一帯一路」見極めを。
東南アジアでももっとも開発が遅れているとされるラオスは国際ニュースに登場することも少なく、伝えられる国内情勢も限定的だが、近年中国との関係が深化し、中国資本がラオス経済を席巻しようとしていることだけは間違いない。
そのラオス・サイソンブン県で6月19日、中国人が襲撃され死傷者が出る事態が起き、ラオスの中国大使館がラオスに滞在中の中国人に対し注意を喚起する安全情報を出していることがわかった。
ラオスでは2015年以降、中国人を狙ったと思われる襲撃事件が続発している。背景にはなりふり構わない中国側の経済進出に伴う環境破壊や強制労働でラオス人の不満が高まっていることなどがあるとされる。ラオスで起きている中国との関係は、とりもなおさず中国が重点を置いている東南アジア各国への進出促進、影響力強化に伴い発生している多くの軋轢と同様であり、中国の札束恫喝的経済進出へのしっぺ返しともいえる。
サイソンブン県とシエンクワン県にはラオス最高峰のプービア山(2823m)があり、近年資源開発とともに観光の波も押し寄せている。政府は長年治安上の理由からサイソンブン県への外国人の旅行を禁止してきたが2016年に解禁に踏み切った。プービア山周辺の山間部には反政府を掲げるモン族の武装ゲリラが出没していたことが旅行禁止の理由だった。
そのサイソンブン県を旅行中の中国人が正体不明のグループに襲撃され、1人が死亡した。ラオス警察当局などによると、周辺地域にはレアメタルや金の鉱山、採掘所があり中国資本も流入していることから、反中国感情が襲撃の背景にある可能性が指摘されている。
■中国資本の一方的流入も背景
ラオスでは2015年9月23日に中国の雲南省昆明からラオスの首都ビエンチャンに向かっていた国際長距離バスがビエンチャン県で襲撃され乗客の中国人6人が重軽傷を負う事件が起きている。
同年は1月に自動車に乗った中国人2人が爆弾テロの標的になり2人が死亡する事件も発生しており、中国人を対象とした襲撃、テロが相次いだ。その後、ラオス当局の警戒と中国側の注意喚起などでしばらく襲撃事件はなりを潜めていたが、今年6月、再び起きてしまった。
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