トランプ政権対北政策「戦略的忍耐」と変わらず
Japan In-depth / 2017年7月29日 18時0分
前回7月4日の火星14が、最高高度2800キロ、飛行距離930キロ、飛翔時間40分だっただけに、さらに技術力をぐっと向上させた。
ICBMとは他の大陸を射程距離に収める地上発射式の弾道ミサイルのことで、その有効射程距離については、米ソの戦略兵器制限条約(SALT)をめぐる交渉で5500キロ以上と定義された。冷戦時代の米ソのICBMは約30分で約8000キロ飛行するとされた。
アメリカの「憂慮する科学者同盟」に所属する物理学者のデビッド・ライト氏は、今回発射の火星14は、通常の角度で打ち上げられ、地球の自転を考慮しないのであれば、1万400キロの射程に達するとの試算を示した。
しかしながら、地球は西から東へと右回りで自転している。このため、ミサイルは発射される方向によって自転の影響を受け、飛行距離が長くなったり、短くなったりする。
表(トップ画像)はライト氏が作成して示し、ブログ等で示したもの。左側の縦列が米国主要都市、真ん中の列が北朝鮮からの距離、左側の列が自転の影響を踏まえたミサイルの到達射程距離。
これによると、首都ワシントンを除き、「右」列のミサイル到達距離が、真ん中列の北朝鮮からの距離をほぼ全都市で上回っている。つまり、ロサンゼルスやデンバー、シカゴはゆうに今回のICBMの射程の範囲。ボストンやニューヨークは届くか届かないかのぎりぎりのライン。ワシントンは射程を外れている。
一方、ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は「通常軌道で飛行した場合の射程は9000~1万キロに達する可能性がある」と分析結果を示している。
また、38ノースは、米本土を射程に収める今回のICBM発射によって「トランプ政権は、レーザー光線のごとく、急速に悪化する状況に重点的に取り組む必要性がさらに顕著になった」と指摘、「トランプ政権の北朝鮮政策への関心の無さは、明確に失敗に至った(オバマ前政権の)『戦略的忍耐』の燃えつくしのごとく見え始めている」と述べ、ミサイルの燃焼にたとえて痛烈に批判した。
また、ワシントンポスト紙のアンナ・ファイフィールド東京支局長はツイッターで、「北朝鮮の挑発の真っただ中で、トランプ政権は韓国大使をいまだ指名できていない。日本大使もまだ日本に着任していない」「それに加え、日本の防衛大臣は辞めたばかり。彼女の職は外務大臣によって兼務されているが、その外務大臣も来週、辞める予定」と皮肉っている。
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