トランプ政権終わりの始まり
Japan In-depth / 2017年8月22日 9時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー2017#34(2017年8月21-27日)
【まとめ】
・バノン米首席戦略官更迭の日本メディアの論調は的外れ。
・最大の問題はトランプ氏自身、政権を統制できていない。
・トランプ政権の終わりが始まったと言えるが、いつ終わるかは不透明。
8月18日、遂にスティーブ・バノン首席戦略官が公式にホワイトハウスを去った。バノン氏は既に事実上辞職していたが、12日のバージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義団体と反対派の衝突のため発表が遅れたという。これは日本にとって、世界にとって朗報なのか。筆者の見立てはこうだ。
まずは日本のメディアの論調だが、率直に言ってちょっと的が外れている。大見出しは「陰の大統領、バノン氏孤立の末」「トランプ氏最側近更迭」「外交安保娘婿らと衝突、政権にリスク」「トランプ主義支柱退場」等だったが、筆者はバノン氏だけに焦点を当てた分析では不十分だと考える。
そもそも、バノン氏は7日に既に職務を離れている。されば12日にトランプ氏が、「各方面の憎悪、偏見、暴力」を非難しつつ、白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチを名指しで批判しなかったことにバノン氏が関与したとは思えない。問題の本質はもっと別のところにあるはずだ。
勿論、バノン氏が極端な民族主義者であり、既得権層や中国のような外国を敵視する極右系の人物であることは事実だ。だが、彼は「陰の大統領」ではなかったし、最近急に「孤立」するようになった訳でもない。彼は昔から自らのイデオロギーに忠実な思想家・革命家であったし、これからもそうだろう。
問題はバノン氏ではない。ケリー首席補佐官や、娘婿クシュナー氏、コーン経済安全保障補佐官でもない。真の、かつ最大の問題はトランプ氏自身なのである。ケリー補佐官にバノン更迭を認めたのはトランプ氏だろうが、この事実こそトランプ氏がトランプ政権を自ら統制できていない証拠である。
▲写真:トランプ米大統領/Photo by Michael Vadon
〇南北アメリカ
ついでに言うと、バノン氏の誤算は少なくとも三つある。
第一は、思想的に波長の合うトランプ氏がバノン氏ほどイデオロギー的ではなかったこと
第二に、バノン氏の独善的全能感により他の人間が馬鹿に見えて仕方がなかったこと
第三に娘夫婦がトランプ氏よりも遥かに賢く、現実主義者だったことだ。
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