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NATOに暗雲?揺れる米欧同盟

Japan In-depth / 2017年8月23日 15時0分

NATOの機能は加盟の一国でも軍事攻撃を受ければ、全加盟国が自国への攻撃とみなして団結して反撃するという集団防衛態勢である。実際には軍事パワーの圧倒的に強いアメリカに欧州諸国が依存するメカニズムだといえる。

▲写真 多国軍事演習“セイバー・ガーディアン17”で、米の地対空誘導弾“パトリオット”部隊と話すNATO軍事委員会ペトル・パベル委員長 ルーマニア 2017年7月 出典:NATO HP

 

■NATOは「時代遅れ」?

NATOの集団的な防衛体制は冷戦中、ソ連の軍事的な攻撃や威嚇を抑える決定的な抑止力となった。だが冷戦後にはそのあり方をめぐり、アメリカ国内でも多様な意見が交わされるにいたった。

トランプ氏は選挙期間中、NATOを「時代遅れ」と批判し、欧州の加盟国が集団防衛での公正な役割を果たしていないと非難した。

実際にNATO諸国はロシアがクリミアを武力で併合したことに警戒を強め、2014年にはオバマ大統領を中心に各国首脳が集まって防衛力の強化を誓い、加盟各国とも自国の防衛費をGDP(国内総生産)の2%以上とすることで合意した。

ところがこの合意を多くの加盟国が守らなかった。2017年はじめの時点で防衛費をGDPの2%以上に保ったのはわずか5カ国だった。アメリカはもちろんそのなかに入っていたから、他の合意不履行国に抗議できる立場にあったわけだ。

トランプ政権発足後の今年2月のNATO国防相会議では同政権のマティス国防長官は「欧州の加盟国の防衛負担が少なければ、アメリカの軍事関与も少なくする」と警告した。

▲写真 イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長と共同記者会見に臨む米マティス国防長官 2017年2月 ベルギー・ブリュッセル 出典:dvids Photo by Tech. Sgt. Brigitte Brantley

この間、NATOの新規加盟国のエストニアがロシアとの軍事摩擦を起こしそうになった。アメリカの一部ではそれに対して「エストニアのために米軍将兵を死なせる覚悟があるのか」という疑問が提起され、NATOへの深刻な懐疑という現実を映し出した。

トランプ大統領はこうした背景で5月下旬のNATO首脳会議に臨んだのだ。会議で同大統領は演説したが、歴代のアメリカ大統領が必ず繰り返してきた集団防衛の誓いを表明しなかった。NATOの条約は第5条で加盟の一国が攻撃されれば、全加盟国がその防衛や反撃にあたるという誓約を明記している。

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