NATOに暗雲?揺れる米欧同盟
Japan In-depth / 2017年8月23日 15時0分
トランプ大統領はその誓約を述べなかったのだ。その結果、メルケル首相ら欧州側首脳を心配させ、反発させたのである。同首相が冒頭に紹介した言葉を述べたのもそのためだった。
▲写真 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で記念撮影の際、モンテネグロのマルコビッチ首相を押しのけるような仕草をしたトランプ大統領 2017年5月 出典:YouTube BoĆa 2
トランプ政権は6月中旬には「NATO第5条は順守する」と言明した。西欧諸国防衛の集団的な責務を果たす基本には変わりはないことを遅まきながら明らかにしたのだ。欧州の懸念に配慮した再確認、あるいは軌道修正だった。
しかしトランプ政権がその責務の実行には他の同盟諸国の防衛努力をも考慮に入れるという態度も同時に明らかとなったわけである。欧州諸国もその後、トランプ政権のこうした不満を意識して、自国の防衛費をGDP2%以上に増やすという動きをみせ始めた。だから8月下旬の現在、NATOの揺れはひとまず納まり、米欧同盟関係も堅固さをふたたび発揮したという状態にあるといえよう。
だがトランプ大統領の5月末前後の言動はNATOがもはや集団防衛態勢として絶対に確実な年来の組織ではなくなるかもしれないという予兆だともいえる。トランプ政権が伝統的なNATO同盟関係のあり方にも再び条件をつけてくる可能性があるということだろう。
■どうなる日米同盟
ワシントンでは微妙な形での同盟の見直しの底流がちらつき始めたともいえる。トランプ氏自身が昨年の選挙期間中、日米同盟を批判の標的にあげて、「アメリカは日本を守るのに、日本はアメリカを守らない」と、その片務性を不公正だと指摘したこともその実例だろう。
▲写真 普天間飛行場 Photo by Sonata
いまのトランプ政権は日米同盟に対しては確かに堅固な保持、そしてさらなる強化という基本姿勢を示した。8月17日の日米両国政府間の2プラス2での合意がその証拠だった。
▲写真 日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)2017年8月 出典:外務省HP
だがトランプ政権には目前の北朝鮮の脅威、そして中期、長期の中国の脅威を認識して、当面は日米同盟を守るほかない、という感じの対応もちらつくのである。
アメリカの歴代政権にくらべると、アメリカが多大の犠牲を払ってでも同盟関係を保持することへの懐疑や消極性がどうしてもにじむといえそうだ。NATOに対するここ数カ月のトランプ政権の態度もその証左のようなのである。
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