インドネシアで麻薬犯射殺急増
Japan In-depth / 2017年8月26日 18時0分
この数字は昨年2016年1年間での同様の死者18人と比較してすでに3倍近い数字となっており、フィリピン型の「超法規的殺人」がインドネシアでも定着しつつある可能性をアムネスティ・インドネシアは指摘している。(写真3)
同組織のウスマン・ハミド代表はメディアに対して「麻薬犯罪がインドネシアで急増していることは深刻な社会問題であることは事実。しかし現場での容疑者の射殺は問題の根本解決にはならない」と当局の強硬策に警戒感を示している。(注1)
▲写真3 逮捕された麻薬密輸犯 2017年7月13日バンテン州アニェル 出典:TRIBRATANEWS CYBER NETWORK HP
こうした人権団体やマスコミの指摘に対して麻薬取締当局や警察は「現場での容疑者殺害は捜査官の正当防衛や逮捕時の抵抗排除がその主な理由で法律を無視した殺害ではない」と説明している。もっともこうした主張を裏付けることは難しく、実態が正当な武力の行使による殺害なのか、フィリピン流の超法規的殺人なのかは客観的に証明する手立てはいまのところないのが現状だ。
■麻薬犯罪に宣戦布告
ジョコ・ウィドド大統領は8月16日に議会で行った国家演説(施政方針演説)の中で麻薬問題に特に触れ「我々インドネシアの若い世代の将来を荒廃させる麻薬とその密売人たちに対して断固としてこれを排除するための戦争をここに宣言する」と麻薬犯罪に対する宣戦布告を行った。(写真4)
▲写真4 議会で演説するジョコ・ウィドド大統領 2017年8月16日 出典:Secretariat Cabinet, Republic of Indonesian HP
インドネシア当局によると、人口2億5500万人のうち麻薬中毒者、麻薬使用者は6400万人に上るという。かつてインドネシアでは歓楽街やスラムなどでシャブシャブや金魚、スピードなどという名称で覚せい剤や合成麻薬が密売されていた。ところが近年は7月に最大級の量が摘発された覚せい剤のメタンフェタミンの結晶が芸能人や主婦、労働者などの間で流行の兆しをみせているという。
そして最近の麻薬関連犯罪で目立つのが密輸、密売に外国人の関与が多くなっていることだという。7月の大量覚せい剤押収や地方港湾都市での水際作戦で摘発された麻薬密売事件で台湾人、中国人が関与するケースが増えている。
これもフィリピンの強硬策で密輸ルートや密売ネットワークがフィリピンからインドネシアにシフトした影響とみられており、「フィリピンに比べて捜査が手ぬるいとインドネシアが舐められている証拠だ」(BNN関係者)としてある程度の強硬策は仕方ないとの意見が根強いことも事実だ。
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