日米繊維交渉“善処します”誤訳伝説 その4
Japan In-depth / 2017年9月3日 19時35分
▲写真 尖閣諸島 出典:Al Jazeera English
1971年6月に予定されていた沖縄返還協定調印の直前、米政府は台湾とも繊維交渉を続けていたが、交渉担当者は台湾に一定の譲歩を示す必要があると判断した。米政府の公文書によれば、繊維交渉担当のデイヴィッド・ケネディ大使は「問題解決の『唯一の方法』は沖縄返還協定に基づき尖閣諸島を日本の施政下に置くことを留保することであると確信している」と述べていた。
▲写真 デイヴィッド・ケネディ大使
つまり台湾への譲歩とは、尖閣諸島をめぐる台湾による主権の主張に理解を示すことだ。日本を犠牲にしているとの印象を与えて、対日繊維交渉を進める上で効果があると、ケネディは狙っていたのである。
このケネディの案は最終的にニクソン、キッシンジャーらの米政府トップの判断で葬り去られたが、繊維交渉難航の原因が「善処します」誤訳だったとしたら、その影響で尖閣諸島の日本返還が宙に浮いた可能性もあるといった指摘が出てきてもおかしくはない。もう1つの「ニクソンショック」があったかもしれないということだ。
だが、日米の公文書などを読む限り、繊維交渉の失敗は日米首脳会談における佐藤の発言の訳語の良し悪しとはまったく無関係のものである。佐藤が「約束」を実行しなかったことに起因するのである。
「善処します」という発言は訳しづらいが、貴重な米側の公文書が残っている。すなわち1回目の佐藤・ニクソン会談から3年後の1972年8月19日に行われた田中角栄総理とキッシンジャー補佐官との会談で「善処します」が使われているのである。
長野県・軽井沢町の老舗のホテルで貿易問題を話し合っている時に田中が「善処します」と発言したのである。ただし、佐藤のように曖昧な姿勢を示すためではなかった。
「率直に言えば、繊維問題をめぐる佐藤・ニクソンの会談で東洋的、日本的なある表現が前総理によって使われたと信じる。それは “zen sho 。[米公文書によれば、この時通訳者は、訳しづらいが、大雑把に言えばこうなると語った:“このことを慎重に、前向きに検討する。”または“善意の精神に基づき、最大の努力を払って何ができるのか検討する。”] 誰かが国会でこの表現を使えば前向きの態度の発言だと受け止められるが、外国の政府間なら多分、だめだろう。私は誤解を避けたい。」
田中は佐藤・ニクソン会談で “zen sho sru.”という東洋的で、日本的な表現が使われたと、キッシンジャーに紹介したのである。確かに通訳者が当惑する様子が読み取れ、2つの訳例を示している。
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