北朝鮮の挑発に一喜一憂するな
Japan In-depth / 2017年9月13日 8時24分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー2017#37(2017年9月11-17日)
【まとめ】
・北朝鮮は電磁パルス攻撃は行わないだろう。直接米軍基地を攻撃したほうが手っ取り早い。
・日本のメディアは北朝鮮の一挙手一投足に一喜一憂し過ぎる。
・危機を煽る報道には十分注意が必要だ。
今週も日本では北朝鮮による6回目核実験の余波が続いたが、米国からの報道はカリブ海諸国から米国のフロリダ州を襲ったハリケーン被害の話ばかり。11日には国連安保理で新たな決議案が採決されるかもしれないというのに。やはり、世界中どこでも、国内災害ニュースが国際ニュースに優先するようだ。
現在報じられている「修正決議案」の内容は流動的。コメントするのは時期尚早だろうが、内容は見なくても見当が付く。中国が石油や石油精製品の禁輸を簡単に受け入れるとは到底思えないからだが、いずれ何らかの決議は採択される。決議が出来なければ、更に間違ったシグナルを送ることになるからだ。
今週気になった記事は北朝鮮のEMP(電磁パルス)攻撃に関するものだ。EMP兵器とは、核爆弾を上空で爆発させ、発生した電磁波で地表近くの電子機器などを大量の電流で破壊する能力を持つ兵器のことだ。北朝鮮が9月3日にEMP攻撃の可能な核弾頭を開発したと発表したため、ちょっとした騒ぎとなった。
確かに、日本での対策はまだ緒に就いたばかりだそうだが、理論的には昔から知られていた。何故今頃大騒ぎするのか、ちょっと不思議なくらいだ。欧米では北朝鮮によるEMP攻撃に懐疑的な声も少なくない。確かに実際に使われれば大混乱となる可能性は否定しないが、北朝鮮は本当に使うだろうか。
日本を例に考えよう。仮に日本上空でEMP攻撃を行えば、電力供給や交通網に大混乱が生じるだろう。だが、肝心の在日米軍にはある程度の防御手段があるはずだ。されば、こうしたマドロッコシイ攻撃より、直接米軍基地を核ミサイルで攻撃した方が手っ取り早い。技術的可能性と使用の蓋然性は違うのだ。
EMP攻撃に限らず、日本のメディアは北朝鮮の一挙手一投足に一喜一憂し過ぎるのではないか。このような未確認情報の垂れ流しや反復報道は、有事における日本社会、日本国民の対応能力を著しく低下させかねない。これでは北朝鮮側の思う壺ではないのか。徒に危機を煽る報道には十分注意が必要だ。
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