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対北制裁、またもや空砲 中国の策謀

Japan In-depth / 2017年9月13日 13時0分

 

▲ 写真  中国銀行本社ビル 北京

世界の基軸通貨ドルを入手できなくなれば、中国の金融機関はたちまち干上がるので、米側の要求に応じざるをえなくなるはずだ。ところが、オバマ前政権はもとより、トランプ政権もまた逡巡している。

 北の核実験を受けた3日には、トランプ氏がツィッターで「(中国の対北圧力は)ほとんど成果を上げなかった」、「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」とぶち上げた。

(トランプ大統領のツイート)

[embed]https://twitter.com/realDonaldTrump/status/904377075049656322[/embed]

北とビジネス取引する最大の国とは、もちろん中国のことである。ムニューシン財務長官は大統領の指示を受けて「北朝鮮との取引を望む者は米国と取引できないようにする」と言明し、北に協力する中国企業リストを作成中だが、ワシントンの関係筋からは「銀行大手は対象外」と聞く。なぜか。

▲ 写真 ムニューシン米財務長官 出典)米財務省

大手銀行が国際金融市場から締め出されると、中国で信用不安が起きかねず、もとよりバブルにまみれた金融市場が震撼する。習近平政権は激しく反発し、米企業に報復しかねない。アップルなどは中国が最大の市場であり、トランプ政権が6月以来検討中の、通商法301条での対中制裁にも米産業界は反対している。

米企業や消費者も中国からの輸入に依存している。「米経済に打撃を与えることなく中国との貿易を大幅に制限することはほぼ不可能だ」(5日付け米ウォールストリート・ジャーナル紙電子版)。

 では、11日の国連制裁決議の効力はどうか。石油製品上限枠、年間200万バレルの設定を例にとろう。対北輸出のほぼ全量が中国からの輸出である。中国の輸出入管理・税関事務を行う中国海関総署統計をもとに作成したのがグラフ2である。

グラフ2

パイプラインを通じた中国からの対北原油供給は同総署の管轄外だが、石油製品についてはデータを把握している。それによると、習近平政権下の中国は対北石油製品輸出を増やし続け、2016年年間で200万バレルの水準とし、2年半で倍増させた。そして、ことしに入って減らし、7月までの1年間では158万バレルに落ち込んでいる。

すると、今回の「制裁」による上限を大きく下回っているのだから、今後中国は制裁破りの非難を浴びることなく、北向けにガソリンや重油、経由の輸出を増やせることになる。国連制裁決議は原油の対北輸出を過去12カ月間合計量、即ち現状維持としており、削減されるわけではない。

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