北朝鮮守るアジアの冷戦構造 金王朝解体新書その11
Japan In-depth / 2017年9月16日 17時45分
すでに述べたように、北朝鮮製弾道ミサイルの存在が注目されるようになったのは1990年代以降であって、決して短くはない時間が経過している。その間の試行錯誤の成果は、当然あるだろう。
しかし、それだけでは説明がつかない。本年8月の、一連のミサイル騒動の際、ウクライナの国営企業から、ミサイルのエンジン技術が北朝鮮に流出したのではないか、との疑惑が報じられた。ウクライナは旧ソ連時代、軍需産業の中心地だったところで、ミサイルや航空機から装甲自動車まで、多くの生産拠点が置かれていた。
しかし独立後、ロシアとの関係が悪化したという事情もあって、兵器や技術の売り先がなくなってしまったのである。
そこに北朝鮮が目をつけて……という話は、いかにもありそうなのだが、ウクライナ政府筋はこの報道を否定し、本当の流出元はロシアだ、と主張している。
語るに落ちた、とはこのことで、直接売り渡したのがどちらであるにせよ、ウクライナに蓄積されていた旧ソ連時代からの弾道ミサイル技術が、北朝鮮に流出したことは間違いない。
▲写真 ウクライナ OTR-21 Tochkaミサイル 独立記念日2008年8月24日 キエフにて Photo by Віталій
つまり、現在の米国の軍事技術に追いつくにはほど遠いが(米国の最新型巡航ミサイルなど、マンションの特定の窓を撃ち抜くほどの精度があると言われる)、冷戦時代のソ連の水準には近づいている、ということだ。
核弾頭の小型化にも成功したと宣伝しているが、これまた軍事専門家たちの意見では、まだ弾道ミサイルに搭載できるところまでは行っていないが、ミサイル本体と同様、長足の進歩を遂げていることは否定しがたく、やはり独自の試行錯誤だけではあるまい、と考えられる。
そもそもロシアは、米国トランプ政権が進める北朝鮮への制裁強化に消極的で、石油輸出を禁止どころかむしろ拡大させるなど、半ば公然とかの国を支援している。プーチン大統領自身が、北朝鮮はどんなことがあっても核武装を放棄しないだろう、とコメントしたことは、記憶に新しいところだ。
北朝鮮問題の本当の厄介さが、ここにある。
▲写真 金正日と露プーチン大統領 2000年7月19日 Photo by Presidential Press and Information Office
米中露という大国の思惑が複雑に絡み合い、日本が独自の外交政策を打ち出そうとしても、事実上不可能になってしまう。
この記事に関連するニュース
-
韓国・申源湜国防相のインタビュー要旨
読売新聞 / 2024年7月24日 5時0分
-
アングル:米ロが中距離兵器を再配備、中国巻き込み軍拡競争複雑化
ロイター / 2024年7月20日 7時59分
-
トランプ氏演説で見えた外交の「強さ」と「危うさ」 同盟観は語られず内向き懸念残る
産経ニュース / 2024年7月19日 19時32分
-
露朝、軍事協力が加速「北朝鮮がウクライナに派兵」の情報、見返りはミサイル精密誘導技術か 日本は3方面と対峙することに
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月16日 6時30分
-
プーチン氏、核搭載可能な中距離ミサイル配備再開を示唆 米に対応
ロイター / 2024年6月29日 2時58分
ランキング
-
1小5が校外行事で意識不明 頭蓋骨骨折、2段ベッドから転落か
毎日新聞 / 2024年7月26日 21時57分
-
2東京や大阪など35都府県に熱中症警戒アラート<br>今日27日(土)対象
ウェザーニュース / 2024年7月27日 7時0分
-
3「海自逮捕」防衛相報告資料に記載=次官に口頭で説明―不正受給
時事通信 / 2024年7月26日 22時19分
-
4「夏はうつ状態になるリスクが潜んでいる」食欲低下に不眠…一見似ている「夏バテ」と「夏うつ」を見分ける方法
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月27日 7時5分
-
5ペットボトル収集車から遺体で見つかった男性 買い取り業者の47歳社員と判明 積み込み作業中に誤って巻き込まれたか
CBCテレビ / 2024年7月26日 20時14分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)