歪んだ世界の日本観1 かっこいい日本と残酷な日本
Japan In-depth / 2017年9月30日 9時50分
古森:それらの社会問題も「クルーエル・ジャパン」という偏見の一部だというわけですか。なぜそういうことになるのでしょう。
キンモンス:私の用語で言えば、欧米人たちのあいだにネオ・レイシズム(neo racism)、またはカルチュラル・レイシズム(cultural racism)と呼ぶべきものが存在しています。
古森:日本に対する新たな(ネオ)人種差別(レイシズム)、文化的な(カルチユアル)人種差別ですね。
キンモンス:19世紀の欧米人は、有色人種は知能が劣るとか、視力が悪いなどという生物学的、肉体的な差別を信じていました。第二次大戦中、アメリカでは日本人はみな近眼で出っ歯だと言われていたのがその典型ですね。いまは生物的・遺伝的な差別のかわりに、欧米人は日本人の価値観や意識の低さなど文化的なことを持ち出して日本人を差別しています。実際、欧米のジャーナリストや学者は日本人に対していわれのない優越感を持っている。
彼らはそれを前提に、ある意図をもって「少子化」「ひきこもり」「女性問題」「援助交際」のような日本の社会問題を取り上げるのです。
古森:日本について日本人が知らないことも自分たちは知っているのだ、という態度ですね。その種の主張には事実の裏づけがないことがほとんどです。
キンモンス:そうした記事で彼らが伝えたいのは日本の現実や事実ではなく、自国がいかに優れているかということです。日本はこんなにひどい国であるとあげつらい、まるで自分の国にはそんな問題がないか、あったとしても日本ほどひどくはないと言いたいのです。
現にある評論家が『ニューヨーク・タイムズ』に、アメリカにはこんなに欠点があると列挙した後、しかし、日本はわれわれよりもさらに悪いと書いていました(笑)。
それほど直接的に言うのはきわめてまれですが、しかし私は、そういう考えがつねに欧米のジャーナリストや学者の背景にあるのではないかと疑っています。彼らはそもそも日本の社会について基本的な知識を持っていないので、日本にとって不名誉な数字があれば、それを自分の都合のいいように取り上げて日本を論じようとします。
(その2に続く。全4回)
【このキンモンス・古森対談は「世界の日本観はまだまだ蔑視と偏見だらけ」と題されて、月刊雑誌「WILL」2017年10月号に掲載された内容を4回に分けて転載するものです。】
トップ画像:アール・キンモンス氏 ©WiLL編集部
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