真のテーマは経済 スペイン・カタルーニャ地方独立問題(上)
Japan In-depth / 2017年10月1日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・スペイン・カタルーニャ地方議会、独立の是非を問う住民投票実施を可決。
・カタルーニャは民族的にスペイン中央政府から独立の機運がある。
・経済的に豊かな同地方は、政府の高い税金と少ない交付金に不満を抱いている。
まったくの偶然だが、9月6日、スペインのカタルーニャ地方議会が、独立の是非を問う住民投票の実施を可決した当日、私は同国のバスク地方にいた。
ホテルのTVで、もちろんトップニュースであったが、そのニュース一色に染まったわけでもなかった。メキシコの震災や、カリブ海からフロリダ半島にかけて大きな被害をもたらしたハリケーン、さらにはローマ法王のコロンビア訪問の話題にも、かなり時間が割かれていたのである。同じスペイン語圏で移民も大勢来ているという事情があって、中南米のニュースはやはり需要があるのだろう。
もうひとつ、今次の住民投票可決は想定内の出来事で、投票の結果と独立の可否それ自体は別問題だ、との認識が、広く浸透しているのである。
どういうことか、具体的な論考は次稿に譲らせていただくとして、ここでは、そもそも何故スペインの一部が独立を志向するのかを見てゆこう。
まず、スペインという国の成り立ちについて知る必要がある。
さすがにここで、古代から語り起こす紙数はないが、紀元前2世紀にローマの版図に組み込まれたが、やがてゲルマン系の西ゴート族がこの地を支配した。しかし、その西ゴート王国もカトリックの信仰を受け容れ、今日に至るもカトリック国と位置づけられている。
ちなみにスペインは英語読みで、イスパニア、もしくはエスパーニャが原音に近い。古代フェニキア人が、経緯は不明ながら「ウサギの土地」を意味するこの言葉を知名として定着させたらしい。いずれにせよ本稿では、日本の読者の便益のためスペインで統一する。
ともあれ、この「国のかたち」が定まるまでには、800年におよぶイスラムとの戦いを経験せねばならなかった。711年に、アフリカ大陸北部で勢力を伸ばしたイスラムのウマイア朝が侵攻。西ゴート王国は718年に滅亡し、半島のほぼ全域がイスラムの支配下に入ったのである。
この体制下では、キリスト教徒やユダヤ教徒は、納税の義務を果たす見返りに信仰の自由は保障されていたのだが、北部の山岳地帯に逃れた少数(一説によれば、当初は80数名)のキリスト教徒によって、レコンキスタ(再征服運動)が始まった。
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