歪んだ世界の日本観2 有色人種の「文化」
Japan In-depth / 2017年10月2日 9時49分
古森: 自分たちの偏見の論証となるような数字だけを取り上げて、日本では女性の地位が低いとか、女性を虐待していると主張しているわけですね。
キンモンス: 私が以前から本にまとめようと考えているテーマがあります。タイトルも決まっている。"Americans ain't got no culture"というのです。
古森: 「アメリカ人に文化はない」。"ain't"は、「何々しない」というときに使うちょっと下品な言い方で、"He is not"とか、"He doesn't"の代わりに"He ain't"と言うと、ものすごくバカにしたニュアンスになりますね。
キンモンス: 欧米人が日本について語るときには必ず日本の〝文化〟を持ち出します。しかし、アメリカかイギリスで同じ問題が起こると、自分たちの文化に関連づけるようなことは絶対にない。つまり、「アメリカ人に文化はない」のです。たとえば2009年から2010年にかけて起こったリコール問題で、トヨタ自動車がアメリカで批判の矢面に立たされたことがありましたね。
古森: 結果的には根拠のない言いがかりだったのですが、トヨタ車を運転中に発生した急加速事故は構造的な欠陥によるものだと、不当に断じられて、全米でトヨタ・バッシングが起きましたね。
キンモンス: アメリカの新聞は、「これはトヨタの文化としての欠陥であると同時に、都合の悪いことはごまかそうという日本人の無責任文化の表れである」と、こぞって報じました。一方、2014年2月に発覚した、GM車のイグニッション・スイッチの欠陥(センサーの動作が不良となりエアバッグが作動しなくなる)が問題になりましたが、GMはそれを直そうともせず、何年間も放置し続けてきた。トヨタ車の問題では死亡者はゼロでしたが、GMの場合、そのせいで確か100人以上が亡くなっています。にもかかわらずGMはそれを報告せず、隠蔽した。しかし、「これはGMの文化としての欠陥であると同時に、都合の悪い事は隠そうというアメリカ人の無責任文化の表れである」と言う欧米人は誰一人としていません。
それはドイツでも同じです。2015年、フォルクスワーゲンが排ガスの排出量の数値を不正に操作していましたが、それでドイツ文化が云々されることはまったくなかった。
古森: なぜ、トヨタだけが日本の文化と結びつけられるのでしょうか。
キンモンス: それはアンソロポロジー(anthropology)、つまり文化人類学というものを欧米先進国はすでに乗り越えているが、有色人種の国である日本はまだそうではないと考えているからです。
古森: 「文化」と言っても、この場合は音楽とか芸術とかではなく、いわゆる秘境の原住民が持っているような奇習ともみえる「文化」ですね。英語のculture には「土着の人たちの独特の習慣や考え方」というような意味もあるわけです。だから米欧の一部の評者たちは、日本の社会は民族特有のそういう文化的特質によって説明できる、と主張します。しかし、自分たちはそんなものはすでに超越した存在だから、欧米で同じような現象が起きても、そういう「文化」という言葉を使って説明するのは無意味だというわけですね。
(1の続き。3に続く。全4回)
(このキンモンス・古森対談は「世界の日本観はまだまだ蔑視と偏見だらけ」と題されて、月刊雑誌「WILL」2017年10月号に掲載されました。その内容を4回に分けて転載します。)
トップ画像:アール・キンモンス氏 ©WiLL編集部
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