“国歌斉唱不起立”に見る米人種問題の本質2
Japan In-depth / 2017年10月4日 12時0分
さらに黒人たちの怒りに火をつけたのが、セントルイスでの抗議活動に対して、機動隊の警官たちが、「誰の道路だ?我々のものだ!」と繰り返し叫んだことである。主権在民の真髄が、ここに現れている。
このフレーズは、そもそも『黒人の命こそが大切(Black Lives Matter)』運動の参加者が、街を思いのままに支配できると考える警察に対して叫んできたスローガンであり、それを警察側が盗用したことが、抗議をエスカレートさせることになった。
さらに、市警のローレンス・オートゥール署長代理は記者会見で、「セントルイスは、我々の都市だ。我々が状況をコントロールしている」と述べた。暴徒化したデモ参加者を鎮圧したことを指していたのだが、警察が黒人の生殺与奪の権を持つ現実を改めて見せつけることとなった。
ジョージタウン大学法学部で教鞭を執るポール・バトラー教授(元連邦検察官)は、「市警が暴徒だけでなく記者や傍観者まで逮捕しまくっていた状況を見れば、効率的な取り締まりとは言えない。オートゥール署長代理の主張するように、警察が本当に事態を完全掌握しているなら、それはもはや自由の国ではなく、警察国家なのだ」と看破した。
これが、黒人選手たちの抗議している米国の仕組みのほんの一端である。このような体制を象徴する国旗や国歌に「敬意を表せ、表さなければ米国人にあらず、テロリストだ」との言説は、ヨーロッパ中世の神への冒涜に対する教会の罰を想起させる。
■ 絶望に次ぐ絶望
こうした抗議行動は、いつまで待っても正義が実現されない絶望から生まれている。同じミズーリ州ファーガソンで2014年8月、丸腰の黒人青年マイケル・ブラウン君(享年18)を射殺した白人警察官ダレン・ウイルソン氏(31)も、「ブラウン君がこちらに向かって走ってきて恐怖を覚えた」との証拠のない自己証言で無罪となった。
写真)マイケル・ブラウン氏 出典)Youtube : Boyce Watkins
メリーランド州ボルティモア市で黒人男性フレディー・グレイ氏(享年25)が刃物の不法所持の疑いで逮捕された際、護送車の「ロデオ運転」により脊髄を損傷して一週間後に死亡した事件で、殺人や過失致死などの疑いで起訴された警官6人は、グレイ氏は「自殺した」と言い張り、すべて無罪放免となった。
ボルティモアの黒人市長ステファニー・ローリングス=ブレーク氏(47)も、当時の黒人大統領のバラク・オバマ氏(56)も、抗議行動に出た黒人たちを「チンピラ」と呼び、絶望の状況を理解しようともしなかった。黒人指導者たちは、黒人に対する正義の実現より性的マイノリティー(LGBT)の権利擁護に血道をあげ、同胞を裏切り続けている。
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