ガラパゴスな日本版GPS衛星
Japan In-depth / 2017年10月9日 23時0分
「みちびき」は普及しない。まず、これはGPS機器を作る側になれば理解は容易である。日本周辺でしか使えないシステム受信機は誰も商品化しようとしないからだ。
GPS機器は地産地消ではない。世界商品だ。なぜなら求められるのは世界中で使える機材である。日本だけ、アメリカだけでしか使えないシステムは要らない。
さらにメーカーは世界中を相手に作る必要がある。グローバル経済の下では世界市場を相手にしなければならない。特に工業製品はそれが求められる。市場規模が確保できなければスケールメリットを甘受できないからだ。
例えばガーミン(GARMIN)はそれだ。台湾のメーカーだが台湾省の需要だけでは食っていけない。世界中を相手にしなければならない。だからハードは共通にしてソフトで言語切替をする機材を作っている。
チップ等はなおさらだ。さらに携帯電話用等に組み込む汎用GPSユニットやGPS受信チップの会社となれば、一国専用品を作るような無駄はできない。
つまり「みちびき」オリジナルとなるセンチ誤差対応のL-6信号処理を入れる余裕はない。なぜなら日本限りのサービスであること。さらに測地精度として過剰であり万人が必要としない水準性能だからだ。携帯電話にRTK(注1)を入れるようなもので、コスト的に無駄でしかないからだ。
「みちびき」で使われるのは既存機材のコンパチ信号だけだ。実際に「みちびき」対応品を見ても使用信号はL-1、L-2、L-5信号でしかない。これらはアメリカのGPS衛星コンパチであり、いまさら登場しても仕方もないものだ。
つまりは「みちびき」独自のセンチ誤差性能は使われないのである。
これは高級な土木測量器具でも同じだ。ソキア(SOKKIA)のトータルステーションをみても、GPS機能に「みちびき」L-6信号対応はない。あるのは米GPSコンパチのL-1、L-2信号である。標準装備にそのような機能をつければ、その分値段は高くなる。「みちびき」が対応しないエリアでの競争力を失う。いずれはオプションで登場するだろうが、世界市場・世界標準ではないので法外に高くなる。日本人でも買わない。
独自の高性能を作っても製品は普及しない。打ち上げた面子から国の機関や、国の事業へのお付き合いがある民間が馬鹿馬鹿しいことを知りながらイヤイヤ使う程度である。
■ 誰も使わない「みちびき」
「みちびき」の精密測地機能は実用途もない。センチメートル単位測地機能があっても、それを利用する産業分野はほとんどない
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