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ガラパゴスな日本版GPS衛星

Japan In-depth / 2017年10月9日 23時0分

大抵は今のGPS精度で構わないためだ。大まかな位置をメートル単位で把握する程度でよい。あとはそれとは別に周辺認識で対応する形である。

細部誘導が必要な分野もそうだ。精密部分はカメラ等による光学認識で行われるからだ。自動運転や遠隔施工では、細かい操作は光学、EO(電子工学)、ミリ波、音響による周辺認識である。

逆に、すべてをセンチメートル測地に委ねる方が危険だとも考える。

これは自動車や農業機械、土木重機の動作を考えれば理解しやすい。カメラからの光学情報でやったほうが致命的な間違いは減らせる。

例えば車の自動運転と緊急道路工事への対応だ。片側車線が緊急工事に入っても光学認識なら現状に合わせて車線を変更できる。だが、これをセンチメートル測地だけで動かすと危険だ。事前通知がなければ正確に工事現場に突っ込んでしまう。つまりは「正確に間違える」可能性があるのだ。

自動車以下の世界市場対応でもそうなる。繰りかえすが日本でしか使えないシステムを根幹にあわせて自動車や農機具をつくることはない。当然ながら「みちびき」なんぞ使わない。

ドローンも同じだ。大概の運航なら従来のメートル誤差で十分である。それがセンチ単位となるメリットはない。物資輸送でセンチ単位誤差は不要であるし、航空写真撮影でもセンチ誤差は不要である。

さらにいえば光学等による現状周辺認識は緊急時に強い。事故等で「みちびき」のような衛星測地システムが不調となっても影響を請けないからだ。

そして、それを組み込んだシステムもある。今の巡航ミサイルはGPSも使うが、それがダメになったときに備え、目標突入として画像認識、経路誘導も風景認識が準備されている。後者は夜間でも使えるようにストロボまでつけたミサイルもある。

 

■ 一種の宇宙開発詐欺

「みちびき」打ち上げは一種の宇宙開発詐欺といってよい。使いもしない「みちびき」事業に金を突っ込むことで宇宙開発セクターが儲ける錬金術でしかない。

最初に述べたとおり准天頂衛星のアイデア自体も時代遅れになっている。

▲図 準天頂衛星システム整備スケジュール 出典:内閣府「みちびき(準天頂衛星システム)」

昔はナビゲーション衛星は少なかった。米GPS衛星は24ヶしかなかったので、タイミングによってはみんな低い高度となり、市街地や山間部では使いにくく、しかも精度にも難が生まれた。

だが、今では衛星は一気に100ヶ程度まで増えた。いつも天頂方向には幾つかの衛星が飛んでいる。ヨーロッパのガリレオ、中国の北斗、ロシアのGLONASSが同様に20ヶ以上ずつ増加したからだ。実際に今の汎用GPSユニットはこれら衛星のデータを纏めて利用できる。だから「天頂方向が」云々はない。

さらにセンチ級誤差も既存機材で実現している。測量ならRTKと呼ばれる受信法を用いれば実現する。誤差データはやや大きくなるものの移動体に適用もデファレンシャルGPSで実用されている。

本来、「みちびき」は整理すべき対象だったということだ。日本は已に貧乏国に陥ろうとしている。金がないのに無駄金を使う余裕はない。

 

注1)リアルタイムキネマティックGPS測量の略。既知点からの補正観測情報携帯電話無線利用して移動局送信し、移動局位置リアルタイム測定する方法

トップ画像:H-ⅡAロケット35号機による「みちびき3号機」打上げの様子。種子島宇宙センター(鹿児島)2017年8月19日 出典/三菱重工HP

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