仏紙も報じた「過労死(KAROSHI)」
Japan In-depth / 2017年10月19日 23時31分
過労死とは、長時間の残業や休みなしの勤務を強いられた結果、精神的・肉体的負担で、労働者が脳溢血、心臓麻痺などで突然死したり、過労が原因で自殺することなどを言うが、先進国で、管理職でもない一般職、しかもホワイトカラーの労働者が長時間働くことにより亡くなることは、普通では考えられないことであり、日本の「過労死」が特別視されるのもよくわかる。
特にフランスでは2002年から一週間に35時間以上の労働を基本的に禁じる労働制が施行されていることもあり、一般労働者の働く時間を短くすることに対してはとても敏感だ。その上、労働生産性も常に世界のトップクラスに位置する実力。
しかしながら、単に働く時間を短くして、生産性をあげればいいと言うものでもないことも、そのフランスから学ぶことができる。求人情報専門の検索サイトIndeedが2016年度に行った調査(注1)によると、仕事に対して一番不満を持っているのは長時間労働が常習化する日本であったが、週35時間制を遂行し、労働時間が短いはずのフランスも、なんとワースト4位にランクインしているのだ。
フランスは週35時間の労働環境を手にいれた。しかしこうして減らされた労働時間を取り戻すために、労働者にさらなる結果を求める企業も存在するのも事実だ。高い生産性が維持できない場合は、あらゆる手段を使って解雇されるストレスにさらされている人々もおり、仕事を起因とする自殺者も年々増加傾向にある。
先日放映されたフランス2の暴露番組(注2)では、現在フランスで大きく成長している企業において、生産性をあげるために極限まで自動化され、ロボットのように荷詰めしなくてはいけない様子や、休憩後、毎回1,2分遅れて席についたという理由などで、2年間で約100人が解雇されると内容が紹介されていた。放送後、ネット上で炎上したことも記憶に新しいところだ。
番組の内容は多少誇張された部分もあるのだろうが、フランスの失業率は10%をこえ、一度失業すると再就職は大変難しい中、一度就職しても高い生産性を求められ、その要求に答えられない場合は解雇されると言う労働者が持つ不安をよく表していた内容であった。そして、労働時間が短くなっても決して楽はできないフランス人労働者の姿も垣間見ることができるのだ。
そういう視点で見ると、前出の「武士の娘」の日本人の庭師についての描写も興味深い。
「時間払いではなく、一仕事ごとに賃金をもらう庭師の話しで、半日もかけて庭の石を何度も動かして直していたが、でも気に入ったところへ石を据えると、その傍らに腰を下ろし、お金にならない時間を空費するなど、気にもとめず、庭石を眺めながら、煙草をふかしているが、その顔には、喜びと満足の色があふれていた」という。
明治時代の日本では、一般労働者においても「共に働く喜び」、「共に共感する喜び」、「感謝される喜び」、「満足いくものを作り上げる喜び」など、楽しみは「仕事をすること」でも得られてきたことが分かる。また、こういった仕事をすることに楽しみを見出だすことができた理由の一つは、キリスト教の上で労働は神からの罰であるのに対して、日本では「日本書紀」や「古事記」に記載されているように、神と一緒に働いてきたなど、仕事をすることをポジティブにとらえられてきたことも関係しているかもしれない。
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