マルコス一族復権の兆し?
Japan In-depth / 2017年11月2日 23時0分
今年5月には政府がすでに没収しているマルコス一族の宝石約2.37億ペソ相当(約5億円)をオークションにかける方針も示している。
こうした一連の動きの中でドゥテルテ大統領は10月初め、マルコス元大統領時代の不正蓄財や人権侵害に関し「ボンボンはまだ当時7歳くらいの子供だった。マルコスが悪いからといってどうしてボンボンやアイミーが悪いというのだ」と発言した。これはマルコス元大統領への批判を当時未成年だった子供たちに向けるのは「不当である」との考えを表明して、その責任追及に釘を刺す狙いがあるものとみられる。
マルコス一族への歩み寄りに見えるこうした動き、ドゥテルテ大統領のマルコス一族への「寛恕(かんじょ)」に対してはフィリピンのマスコミは厳しい論調で批判している。
「もしマルコス一族が不正蓄財を返還するつもりならすでにそうしていたはずだ。現在マルコス資産はスイスの銀行口座も合わせて100億ドル以上という。6千万ドル以上の利息は不当財産としてスイス当局からフィリピン政府に引き渡されたがその口座の所有者が罰せられないのはおかしい。多少の金塊を国にプレゼントすることで巨額の不正蓄財の罪から逃れられるのならば、マルコス元大統領も英雄墓地で笑っていることだろう」(9月31日付スター紙)
「ボンボンはパナマの銀行で発見された(マルコス元大統領の)不正蓄財のフィリピンへの返還をあらゆる手段を使って妨害するなどその末裔は両親の犯した残虐な統治について認知も謝罪もしていない。むしろ歴史を塗り替えて再びマルコス政治を復活させようとしている。国民はこの恐るべき時代の真実を心に刻む必要がある」(10月3日付インクワイラー紙)
最近の世論調査では昨年6月の就任以来80%を超える高い数字を得ていたドゥテルテ大統領への国民の支持にやや陰りが出てきたとの報道もあり、ドゥテルテ大統領としては根強いマルコス人気を加えて政権基盤を固めようとしているようにもみえる。
こうした動きの背後では「ドゥテルテ大統領は一部とは言えマルコス元大統領の不正蓄財の存在を認めたことになり、一方でマルコス一族は何かの見返りを得ているのではないか、という疑問から目を逸らすことはできない」(スター紙)との鋭い指摘にあるように、ドゥテルテ大統領とマルコス一族の間でなんらかの「政治的取引」があったとの見方もでている。
それがボンボン議員の副大統領就任なのか、はたまた将来の後継大統領候補としてボンボン議員かアイミー州知事を指名することなのか、ドゥテルテ大統領の心中を推し測ることは難しい。
ただ、よくもわるくも「マルコス元大統領」のフィリピン政治に残る影響力がいまだに計り知れないことだけは間違いなさそうだ。
トップ画像:ボンボン・マルコス上院議員 2017年7月 flickr:Bongbong Marcos
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