独裁体制の「安楽死」目指せ 金王朝解体新書その14
Japan In-depth / 2017年11月4日 12時6分
▲写真 Sariwon Folk Street 2013年5月20日 flickr:Uri Tours
もちろん、日韓などの基準で言えば相変わらず圧倒的に貧しいのだが、たとえば1980年代の「苦難の行軍」などと言われた飢餓の時代と比較したなら、見違えるほどだという。
もともとキム・イルソンが独裁体制を確立した際、国民にどのような公約を示したかと言えば、「全国民が白飯と肉の入ったスープを食し、瓦で屋根を葺いた家に住めるようにする」
というものであった。
今更指摘するのもおかしなものだが、60年以上の時を経て、子から孫へと権力の世襲が行われてきた今も、この公約は果たされていない。やはり、北朝鮮の独裁体制は、その命脈が尽きる時が来たのである。
しかし、現実には米国相手に居丈高な態度をとり続けている。
むしろ、米国トランプ政権の方が足下が危ういとさえ言われている。
これまでその理由は、もっぱら中国に求められてきた。中国と北朝鮮は、かなり長い国境線で接している上に、黒竜江省など東北部には、朝鮮族の住民も大勢暮らしている。したがって、「政治的・経済的・軍事的に米国の強い影響下にある統一朝鮮」など作られてたまるか、という論理が働くのである。
これは私の個人的な考えだと明記しておくが、わが国にとっては逆に、「核武装した、反日的な統一朝鮮」の出現はごめんこうむりたい。理想を言えば、南北朝鮮が統一と同時に永世中立国を宣言してくれればよいのだが、日本人の私がこんなことを言っても、かの国の人たちは耳を貸すまい。
話を戻して、北朝鮮の独裁体制を生き残らせているのは、今や中国よりもロシアによるところが大きい。かつて日本の港に現れては、色々と物議を醸した貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」も、現在はロシア航路に就航している。
▲写真 万景峰号 2010年 Photo by Bumix
それだけではなく、本年9月の一連のミサイル発射に対し、米国はじめ国際社会が強力な経済制裁に動く中、ロシアは、民生用を含めた石油の全面禁輸に反対し、制裁を骨抜きにしてしまった。
どうやらキム・ジョンウンという人物は、相当したたかで、今までのような中国一辺倒では立ちゆかなくなることを見越して、ロシアを巻き込むことに成功したらしい。ロシアにとっても、極東における政治的・軍事的プレゼンスを高めるチャンスをわざわざ作ってくれたようなもので、そう簡単に北朝鮮を切り捨てる選択はしないだろう。
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