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急げ兼業規制緩和 福島の医師不足

Japan In-depth / 2017年11月28日 23時0分

▲図1:都道府県別医師数(2014年厚労省医師・歯科医師・薬剤師調査より)

 

■近隣の病院同士の助け合いが叶わない行政体制

実は南相馬市は、この方法を採ることができる。それは南相馬市立総合病院に、多くの若い医者が勤務しているからだ。同院は、震災後の2013年に臨床研修指定病院となった。毎年4名程度が研修し、すでに8名が修了した。このうちの4名が常勤医として残った。その中の一人が山本佳奈医師だ。

さらに、当研究室の卒業生である尾崎章彦医師(乳腺外科)、嶋田裕記医師(脳外科)、森田麻里子医師(麻酔科)なども常勤となった。現在、同院の常勤医師数は30名程度だ。震災前は12人、震災直後は4人に落ち込んだのが嘘のようだ。

「震災後の奇跡」と言う人もいる。ある若手医師は「是非、大町病院をサポートしたい。私は内科医ではないが、ある程度はできると思う。出来るだけのことはしたい」という。

今年9月、山本佳奈医師も全く同じような思いを抱き、大町病院に出向した。孤立した彼女を助けようと、多くの若手医師が希望しているのに、彼らは動けずにいる。地域のベテラン医師が及川友好・南相馬市立総合病院に「若手医師を派遣したらどうか」といったところ、「市役所の指示がなければ動けない」と回答したという。私が知る限り、南相馬市役所が、この問題を深刻に考えている様子はない。

▲写真 医師派遣の鍵を握る南相馬市役所 出典:南相馬市HP

最近、地方公務員の兼業規制の緩和が進んでいる。例えば、奈良県生駒市は、今夏から公共性のある団体での副業を後押しする内部規定を導入したし、神戸市も地域貢献につながる副業を認める仕組みを設けた。医療は住民の命がかかっているため、これほど公共性のある仕事はないと言っても過言ではない。南相馬市も、市立病院の医師の兼業規制を緩和したらどうだろう。当直の応援に行けばいいし、市立病院で外来や手術がなければ、地元の病院で外来を手伝えばいい。学会への参加や大学病院での研修は認めているのだから、問題はないだろう。

それが実現すれば、交通費や宿泊費は不要でコストは下がるため、地元の病院にとっては有り難い。同時に、地元の医師が病院の所属にとらわれず、地域の患者を診察すれば、住民にとってもメリットがある。地元のことをよく知っているし、もし専門医の治療が必要になれば、南相馬市立総合病院など基幹病院にも紹介しやすいからだ。東京の大学病院から派遣されたアルバイト医師では、こうはいかない。

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