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存在しない「数学賞」ノーベル賞の都市伝説2

Japan In-depth / 2017年12月3日 9時22分

ノーベルの遺言に基づき、1901年から「ノーベル賞」として授与が始まったのは、物理学、化学、医学・生理学、文学、平和の5賞である。

写真)ストックホルムのミュージカルアカデミーで初めてのノーベル賞授賞式 出典)Nobel Prize

写真)ノーベル賞メダル 出典)pixabay

後に、具体的には1968年の話だが、スウェーデン国立銀行設立300周年にしてノーベルの没後70周年であることから、これらを記念して新設されたのが経済学賞で、ノーベル財団の側では、正式なノーベル賞の一部門にカウントしていない。たしかに、正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」だが、一般的にはノーベル賞の一部門と理解されている。

もうひとつ、賢明な読者は、数学賞がないことに、すでにお気づきであろう。実はこれについて、都市伝説がある。かいつまんで述べると、「アルフレッド・ノーベルは若い頃に失恋したのだが、その恋敵が数学者だったので、数学者に賞を与える気はなかった」というものだ。

笑ってはいけない。この話、大まじめに信じている人が結構多いのである。ただ、アルフレッド・ノーベル自身が生涯独身で、かつ複数の女性にプロポーズを拒まれたということ以外に、確たる根拠は示されていない。

ではなぜ、数学に賞を与えることを考えつかなかったのかと言うと、彼自身が(何しろ理系の研究者であったわけだから)数学にも強かった分、前述の5賞との比較で言うと、「社会の発展に直接貢献するわけでもなく、多くの人を楽しませるわけではない」と考えたのではないか、と見る向きもある。

私見ながら、失恋云々よりは説得力がある話だ。またも文士の言を引用させていただくと、菊池寛が、こんな言葉を残している。「今まで学んだ様々な学問の中で、数学ほど役に立たなかったものはない。唯一〈三角形の二辺の和は他の一辺より長い〉という知識だけが、道を歩く時に役立っただけだ」

……これはまあ、言い過ぎなのかも知れないが、たしかに数学の分野では、画期的な定理が発見されたとしても、人類の大多数にとっては「なんの話?」で終わりそうだ。

素数の謎が解明されれば、世界中の暗号を無力化できる、という話は、わが国では刑事ドラマ『相棒』から劇画『ゴルゴ13』まで、幅広くネタとして使われているが、それが果たして「社会の発展に貢献する」のか否かと言われれば、むしろ逆効果になる可能性が高い。

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