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シリア難民中継国ギリシャの苦悩

Japan In-depth / 2017年12月14日 16時41分

 

2017年になっても通過危機の影響は残っており、アテネ中心部のオモニアスクエア、シンタグマスクエアというメトロの駅直結の一等地でさえ、一本裏路地を入るとシャッター街が広がり、閉店してしまった店のシャッターには至る所に落書きが施されている。通貨危機以前のギリシャを訪れたことがなく比較できないが、経済破綻の影響は拭いきれない。

写真:シャッター街が増えたアテネ中心部

©久保田弘信

 

いくつもの世界遺産が存在するアテネは、観光も大きな収入源だ。その観光客も減っているらしい。タクシードライバーと話したら、「日本人のお客さんを乗せるのは久しぶりですよ。3~4年前は、たくさんの日本人が来てくれていたけど、めっきり減ってしまいましたね」という。トルコや他のヨーロッパ諸国と違い、今のところ、テロの危険性は少ないギリシャ。それでも観光客が減ってしまったのは、経済破綻に対する悪いイメージからだろうか。

写真:歴史的な建物の周辺にまで落書きがされているのが現状。

©久保田弘信

 

■ギリシャを悩ませる難民問題

 

ギリシャが近年、新たに抱えているのが難民問題だ。シリアの内戦が5年も続き、トータルで500万人近い難民が発生している。その多くが、安住の地を求めてヨーロッパを目指す。

 

シリア難民がヨーロッパへと向かう代表的なルートが、トルコのイズミルからギリシャのレスボス島へ。そこから首都アテネへと渡る道のりだ。ギリシャはヨーロッパの中でも、とくにドイツを目指す難民の中継地点になってしまったのだ。

写真:ドイツに向かうシリア難民の少女

©久保田弘信

 

あまりの難民の多さにヨーロッパ各国が国境を閉鎖すると、行き場を失った難民は、ギリシャに留まらざるを得なくなった。通貨危機から抜け出し切れない状況のギリシャが、難民という新たな重荷を背負うことになったのである。

 

多くの難民は、ギリシャまで辿り着けば、ドイツなど比較的豊かな国まで行けると信じ、命懸けでトルコからギリシャへの海を渡った。ところがギリシャから先のルートは閉ざされてしまい、難民のほとんどが動くことができなくなってしまっているのだ。

 

不安と不満が募るばかりのシリア難民は、「ギリシャが嫌いなわけではないです。ギリシャ人は偏見もなく、私たちに優しくしてくれます。でも見てください、ギリシャ人でさえ仕事がないのに、私たち難民が、この国で仕事ができるはずがありません」と語っている。

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