ノーベル賞と日本のモノ作り ノーベル賞の都市伝説4
Japan In-depth / 2017年12月24日 13時0分
この話が本当なら、もったいないことをしている、としか言いようがないが、私見ながら、実はもっと深刻な問題が存在するのではないか。
冒頭で述べたように、わが国のノーベル賞受賞者は、物理学賞9人を筆頭に、経済学賞以外の5部門すべてにわたって計23人にのぼるが、これは正確に言うと「日本国籍の受賞者」である。
本シリーズ第一回で取り上げたカズオ・イシグロ氏は、親の仕事の都合で子供時代に日本を離れた、いわば特殊な例だが、他に、物理学賞を受賞した時点で日本国籍でなかった人が2人いる。
素粒子の研究で2008年に受賞した南部陽一郎氏と、青色発光ダイオードの発明で2014年に受賞した中村修二氏である。いずれも、よりよい環境で研究を続けるべく、米国籍を取得した。
写真)南部陽一郎氏
photo by Betsy Devine
写真)中村修二氏
photo by Ladislav Markus
これもシリーズ第一回で触れたが、わが国は二重国籍を認めていないので、米国籍を取得するということは、自動的に日本国籍を喪失することを意味する。
しかしそれが、問題の本質ではない。ここ数年、日本の研究機関において、基礎研究に十分な予算が回らず、このままでは将来的に、ノーベル賞受賞者など出ない国になるのではないか、と心配する声が聞かれるのだ。前述のふたりの研究者が日本国籍を捨ててまで米国での研究生活を選んだのは、そのひとつの現れだと考えられる。
昨今こういう問題提起をすると、「大学の研究予算より、待機児童問題を先になんとかしないと」といった反論を受けたりするが、教育や研究への投資というのは、そういう問題ではあるまい。
問題視せざるを得ない事柄は、他にもある。数年前、STAP細胞なるものを発見したとして、マスコミの寵児となった女性研究者がいた。その当時、TVの情報番組がどのような報道をしていたかと言うと、彼女の研究内容を冷静に検証する態度とはほど遠く、研究所で白衣でなくおばあちゃんからもらった割烹着を愛用しているとか、髪型やアクセサリーの好みを取り上げて、「女子力高い!」だったのである。
その後の騒ぎは、今も記憶に新しいところだが、たまたま私の親類に理系の研究者がいて、意見を聞くことができた。
「iPS細胞(2012年に山中伸弥氏が発見し、ノーベル医学・生理学賞を受賞)は、びっくり仰天だったけど、有無を言わさぬデータがどんと出されたので、なるほどこれはノーベル賞だ、と拍手喝采だった。
この記事に関連するニュース
-
「がん治療」に新たな光も…最新“iPS研究”山中伸弥教授が解説 「my iPS」で拒絶反応と費用の壁解消へ【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 10時57分
-
最新“iPS研究”で「がん治療」に新たな光? 山中伸弥教授が解説【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN / 2024年11月24日 21時20分
-
「2099年に寿命という概念がなくなる」若返りの研究がここ10年で急速に進んでいる理由「山中伸弥氏のノーベル賞受賞がきっかけで…」
文春オンライン / 2024年11月24日 6時0分
-
【1949(昭和24)年11月3日】湯川秀樹氏に日本人初のノーベル賞
トウシル / 2024年11月3日 7時30分
-
京大山中伸弥氏×慶大冨田勝氏のオンライン対談が11月5日まで期間限定で無料配信中!山中伸弥教授が人生を激白「泣きたくなる二十数年だった」
@Press / 2024年10月31日 10時15分
ランキング
-
12025年に思い出が消える!?「ビデオテープが見られなくなる」問題【THE TIME,】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 9時0分
-
2輪島市など震度5弱、住民不安「電柱倒れるのでは」…元日とは別の断層の可能性
読売新聞 / 2024年11月27日 21時54分
-
3国民民主・玉木氏、異例の官邸訪問=石破首相に原発新増設を要望
時事通信 / 2024年11月27日 20時9分
-
4出品者に情報提供求める=アマゾンジャパンの独禁法違反―公取委
時事通信 / 2024年11月27日 19時31分
-
5建築火災の専門家「密閉的な空間で放火されたらどうしようもない…」札幌すすきの“ガールズバー”爆発火災 火を放った疑いの41歳男性と20代女性従業員の間で交際トラブルも
北海道放送 / 2024年11月27日 19時56分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください