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崩壊寸前の地域医療 福島県大町病院の場合

Japan In-depth / 2017年12月25日 9時58分

その後、自らの専門領域である乳がんの臨床研究不正では、中外製薬や乳癌業界の重鎮を相手に、たった一人で問題を社会に問うた(https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20171202-00078706/)。その勇気に敬意を表したい。一連の活動を通じて、彼は成長した。視野が拡がり、腹が据わった。

私は、尾崎医師に乳がん領域に拘らず、世界をリードする医師に成長してもらいたいと願っている。今回の件で相談を受けたときには、「病院マネジメントとは何か、地域医療とは何か、間近でみることが出来る貴重な機会だ。是非、飛び込めば」と勧めた。彼は、すでに決心していたのだろう。「外科に拘りません。内科でも事務でも雑巾がけでもなんでもします」と言ってきた。私は、彼の覚悟を猪又院長に伝えた。

大町病院の危機では、厚労省も福島県も何の役にも立っていない。飛び込んだのは山本・藤岡・尾崎という3名の若手医師だった。彼らに、このような行動を取らせたのは、南相馬という地域に対する愛着、住民への感謝、さらに苦境をともに乗り越えてきたという仲間意識だ。

最近、医師偏在を是正するために、厚労省は医師の計画配置を準備している。都道府県および日本専門医機構と連携し、専門医の研修病院の定員を決めることで、医師偏在や診療科の偏在を是正すると主張してきた。来春から開始予定だ。

12月15日、日本専門医機構が、一次募集の内定状況を公開した。この結果を仙台厚生病院の齋藤宏章医師、遠藤希之医師が分析した。その結果は凄まじいものだった。

 

(図3:新専門医制度が診療科偏在に与えた影響 2018年度と2014年度の各診療科の希望者を比較)

厚労省や日本専門医機構の思惑とは反対に、診療科の偏在が加速した。内科医が激減し、麻酔科・眼科などが増加したのだ。

さらに、地域偏在も悪化した。全ての診療科で東京一極集中が加速したのだ。図4は内科の状況だ。2014年度と比較して、東京は77人も増えた。医師不足に苦しむ東京近郊の千葉、埼玉は激減した。

(図4:新専門医制度が内科の地域偏在に与えた影響 2018年度と2014年度を比較)

ちなみに、来年度、福島県内で内科専門医を目指すのはわずか20人。東京(527人)の26分の1だ。この状況が続けば、福島の地域医療は崩壊する。

このような状況の中、大町病院は何とか診療が継続されている。大町病院の経験は示唆に富む。地域医療を守るのは志のある若者だ。厚労省や都道府県、大学医局に依存しても何も解決しなかった。地域医療を守りたければ、当事者が本気で考えねばならない。

トップ画像:医療法人社団青空会大町病院 出典)医療法人社団青空会大町病院HP  

 

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