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トランプ、大企業優遇で対中「決戦」へ【2018:アメリカ】

Japan In-depth / 2017年12月31日 1時6分

 

■ 中国との「決戦」に向けた準備

では、貿易分野はどうだろう。米財界は、トランプ政権による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)離脱の脅し、世界貿易機関(WTO)のサボタージュなど、多国間貿易を破壊する動きを強く非難している。自由貿易を否定すれば、それによって成り立つ米国内の雇用が失われ(NAFTA離脱だけで最大1400万人が失業との推計もある)、関税復活で物価が上昇して消費者も打撃を受ける。トランプ政権は、米企業や消費者の敵ではないか。

だが、この面での米企業の利潤への打撃は、法人税率の劇的な引き下げで補える可能性が高い。規制撤廃が進めば、なおさらのことである。米国の競争力を牽引する大企業に見返りを与えずに、政権が既存の企業権益を取り去ることは考えにくい。

加えて、トランプ大統領に近いバノン元首席戦略官やピーター・ナバロ米国家通商会議委員長(68)、ロバート・ライトハイザー米通商代表(70)などの反中国派の主張を分析すれば、「大企業の力で再び米国を偉大にする」政権目標と政権の貿易政策に整合性があることがわかる。

▲写真 左、ピーター・ナバロ米国家通商会議委員長 出典:Ford school you tube

トランプ政権は、シルクロード経済圏構想「一帯一路」に見られるように、多国間の自由貿易が米国を利する以上に中国を利すると考えているフシがある。

▲図 一帯一路 出典:Tart

そうした自由貿易の前提を揺るがし、世界中の貿易を二国間交渉に分解してゆけば、世界No.1の経済大国である米国の強い交渉力を活かし、米大手企業を中国に対して優位に立たせることができると踏んでいるのだ。

トランプ大統領が多国間自由貿易を否定し、習近平中国国家主席(64)がそれを堅持することを誓うのは、そのためである。多国間の自由貿易が形骸化して、各国が自国の利益のみを追求するようになれば、経済の規模拡大・生産性の上昇・対外影響力の増大など包括的な自由貿易の実を求める中国は不利になり、二国間交渉で圧倒的な力を行使できる米国に勝算が出てくる。

▲写真 中国訪問で歓迎を受けるトランプ大統領と習近平氏中国国家主席 人民大会堂・北京 2017年11月9日 出典:The White House Photo by Andrea Hanks

自由貿易の否定により、米国内では「負け組企業」が必然的に出てくるが、法人減税や規制撤廃で「勝ち組企業」がそれを上回り、米国全体で中国に勝てれば、それでよいのである。トランプ主義の根幹は国家主義であるからだ。

折しも、トランプ大統領は12月18日の米安全保障政策戦略の公表の際、中国の「経済侵略」を非難した。安全保障上の見地から、米国の経済的な国際競争力強化により、「中国のこれ以上の経済的勝利を抑える」方向に焦点は定められた。

 

▲写真 国家安全保障戦略を発表するトランプ大統領 2017年12月18日 出典:米国防総省

2018年は、「大企業を通して再び米国を偉大にする」方針を掲げるトランプ政権と、自由貿易を通して覇権主義的な「中国夢」の実現に近づきたい習政権の摩擦が高まる年になりそうだ。

トップ画像:税制改正法成立を祝うトランプ大統領(左からミッチ・マッコネル上院院内総務、下院議長のポール・ライアン、マイク・ペンス副大統領)2017年12月20日 flickr  The White House

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