競争イコール格差ではない
Japan In-depth / 2018年1月20日 23時35分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
【まとめ】
・「競争」に抵抗がある人が世の中には多い。
・世界の常態は競争。意欲と能力と環境によって結果は変わり、そこに格差は不可避。
・歴史上人類は、最も安全で挑戦しやすい状態に私たちはいる。
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語弊があるのは承知で、どうしてこうも競争嫌いな人がいるのだろうかと思う時がある。誰が一番かを決めたり、勝ち負けをはっきりさせるということに抵抗感を抱く人が少なからずいる。私の小学校は運動会で一番を決めなかった。正確には覚えていないが徒競走は行って、だけれども順位をつけなかったとかそんなことだったような気がする。
▲イメージ画像:Photo by nubobo
とは言え、差は自明のものでいくら濁しても誰が一番かみんなはっきりわかっていた。バレンタインも同じようにチョコレートが禁止だった気がするが、とはいえ誰が誰を好きで、誰が一番人気かなんて、みんなわかっていた。隠されるから、余計に子供はそれを意識する。
興味深いので何度も引き合いに出すが、経済学者の大竹先生が、子供自体に競争を行わず差をはっきり意識しなかった人たちは大人になって、社会保障など弱者救済に否定的になるという研究をしている。理由は、人間には能力差がない(またはあってはならない)というモデルを信じているので、大人になってからの差は全て努力の差という認識になるからだと言う。世の中には明確な差があり努力ではなんともならないものがあるというモデルが、社会保障の根底にはある。
競争をすれば格差が広がるという意見もあるが、競争イコール格差というわけではない。プロスポーツでは競争イコール格差となっているが、アマチュアではそうとも言い切れない。長距離では企業によっては一番の選手より、年齢が上の三番目の選手の方が給与が高かったりする。名誉格差はあまり叫ばれない。主には収入の格差なので、それは競争というよりも、結果に対してどの程度差がある対価が支払われるかによって決まる。
それでも競争したら多少は格差が広がるじゃないかと競争しなかったらどうなるかというと、一歩引いた目線で見ればもっと大きな世界の大集団は皆競争しているので、その人たちに追い抜かれるだけだと思う。
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